Pre Walk

Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #44

Pre Walk

Contributed by Yui Horiuchi

Trip / 2023.06.01

海外へ何度行ったって、旅慣れなんてない。旅で出会う全ての人にフランクに接し、トラブルだって味方につける。着飾らず等身大で、自分のペースで旅を楽しむアーティストYui Horiuchiさんが、サンフランシスコからポートランドまでの旅の記録。

#44

オレゴン州コーバリスはOregon State Universityが街のシンボル。
街の人たちには通称『OSU』って呼ばれて親しまれている。
その大学のスタジアムで今週末開催されるカレッジフットボールの試合を見に行く予定があるので、友人の実家から現地までの道のりを確認するためのPre Walkに出かけた。
日本語で例えるなら予備歩行? 事前準備? 歩いて実際にどの程度、家からスタジアムまでかかるか下見といったところだろうか。

スタジアムまで直行してみると片道40分程度。
犬の散歩ついでにゆっくり歩いてきたので、大股早足なら10分は巻けると想定して、当日は家を40分前に出ることにしよう。

ちなみに友人のお兄さんはここの大学の卒業生だったそうだ。
観戦予定のスタジアムはReser Stadiumと言って、オーナーが慈善活動や実業家として成功を収めたReser夫妻、その愛娘も同じ大学に通っていて当時友人兄と付き合っていたことがあるらしい。
ことの顛末を伺うと、彼女が結構な遊び人で破局したとか…
「今の奥さんの方がよっぽどクールなので結果的に良かった」という弟側の見解に首を縦に振り相槌を打ちながらスタジアムの偵察を終える。

大学を中心にCorvallisの街全体が形成されていて、ダウンタウンや学生の住まいも大学を囲むようにデザインが行き届いている。
キャンパスも広々としていて、寮やシェアハウスなどが大学に隣接しており、アクセスがとにかく良くカレッジタウンとしてかなり立派な構成だと思えた。
友人が生まれた時からすでに成り立っていた学生街だというので驚いた。
なにより今までに滞在していたどの街より緊張感がなく、若い子たちが結構ラフな格好で外にいるのが印象的だった。
女の子はキャミにホットパンツにビーサン、結構寒いんだけどね、若いって財産、羨ましい限り。笑

友人からはWalk Friendlyと歩きやすい街だとは聞いていたけど、ここまで安全でフレンドリーだとは思っていなかったので、あれ? アメリカにいるんだっけ、と一瞬思ってしまうくらい安心感があった。



キャンパス周辺のレストランからドームなどに食事を届けてくれるデリバリーロボット。
昔、ドラえもんに出てきたひみつ道具『畑のレストラン』をなぜか彷彿とさせるデザイン。
蓋を開けたら食べたいものが入ってる、あのカブに似てるからだろうか。

「あ、あの男の子わたしとお揃いのウィンドブレーカー着てる」
「ほんとだね」

赤毛がくるくるふわふわの無造作ヘアをヘッドホンではさみ、ながらスマホの猫背の男の子がこちらには気づかず向かってくる。
ユニクロとマルニのコラボラインのウィンドブレーカーをセレクトしたあたり、センスのいい学生さんがいるみたい。

大学からダウンタウンへ向かうと友人が幼少期に利用していたというレンタルビデオ屋が現存していることに驚いたり、通りの向かいにある家具屋を指差して「あそこが人生初めてのバイト先」などおしゃべりしながら街歩きをスタート。



街のレンタルビデオ屋はレンタルCDとDVDのお店に進化していて、時代の波を感じた。

家具屋での初バイトのエピソードを聞かせてくれた。

「16歳の時に面接に行ったら、じゃあここにいついつ来てねって言われて行ってみたらオーナーの自宅だったんだよね」
「倉庫とかってこと?」
「いやほんとの自宅、それで家の掃き掃除とか庭の植木の剪定とか言われた野暮用を毎回こなすんだけど、時給制だったからかかった時間を事後報告することになってて、だいたい30分くらいで用事を済ませたら2〜3時間ポーチで葉っぱ吸って時間潰してたんだよね」
「ひっでー! それ全然仕事できてないって絶対バレるじゃん!」
「で、初バイトで慣れてないんで時間かかっちゃいました、ってずっと言ってたんだ」
「絶対すぐクビになったでしょ。笑」
「うん、まあそうだった」

ゆるい。笑 ゆるすぎる。笑笑

コロナを友人にうつした張本人のわたしだけど、友人がこういう超laid back(呑気とか神経質じゃない器がでかい的)な性格で本当にわたしはラッキーだったと思う。
迷惑だから今すぐ家出て自主隔離して欲しいっていう人だってもちろんいると思う、健康は財産だし。
分かるけど、もし初めてのコロナ感染体験が海外で、しかも一人で隔離なんかことになっていたら食事だってままならなかっただろうし毎日心細くて不安で発狂してたと思う。
コロナにならないのがベストではあったけど、不幸中の幸い、そばに居てくれたのが陽性反応中も冗談が言えるくらいメンタルが強い友人であったことに改めて感謝した。
心臓に毛が生えてるタイプ、そんな感じ。笑

ポートランドから南下してきているWillamette river(ウィラメット川)まで歩いてくると川沿いに綺麗に整備された公園があった。
その綺麗な芝生の上でなぜか金属探知機をかざし歩いてるおじさんがキュッインキュインコという音を頼りに目星をつけてガッツガッツ地面を掘り起こしていた。
そこだけ芝は禿げて大地が露呈していたけど、落とし物か…なんだろう…。でも、なんかこのおじさんは話しかけない方が良いであろうとわたしのアンテナが何かを察知していたので真相は闇の中。
金属おじさんを横目に通過してドッグパークのある公園の反対端まで歩いた。

ドッグパークでは飼い主が離れたところで犬を見守っていることが多いので、犬が走り回っている様子を眺めるふりをしながら、よくどの犬がどの飼い主か当てるゲームをして時間を潰していたわたし達。
今日はわたしが2組正解で勝ち。
勝敗が分かれたところで犬の名前を呼び、犬が走り回って土埃舞うドッグパークを後にした。

北上してくる車中で充電するのを忘れてた。
もう携帯の電源が切れそうだ。
今夜は友人が幼少期から育った味というローカルピザを食べに行く予定だったので写真を撮るのにギリギリまで温存しておきたかったけど、わたしが大好きなパイナップル入りのハワイアンピザかカナディアンピザはある? ってオーダーに手こずったせいでピザが出て来るまで携帯の寿命が持たなかった。



オバマ元大統領も来たというアメリカンドリームピザの屋上テラス席。

夕日も見え始めていたのにこんなどうしようもないとこを撮ったのを最後にぐるぐるマークが出てスクリーンが暗くなるiPhone。
ただの物と化した重たい電子機器をテーブルに伏せて、目でちゃんと見た景色を脳内HDに焼き付けることにした。
友人と友人のホームタウンに乾杯しながら西陽が眩し〜って言い訳しながら別のテーブルに移動する。
DIYでチリフレークとパルメザンをカウンターから取って来て準備万端。

わたし達のとなりのテーブルでは誕生日の集まりが催されていて、持参したケーキがキャンドルをさす前の状態でスタンバイしていた。
机の中央の巨大な金魚鉢みたいな器にはクラッシュアイスとアルコールとおぼしきポンチ的な液体にいくつもストローが差し込まれていた。

後からやってきた団体客も誕生日テーブルの向こう隣に座り

「君たちのおすすめにしてみたよ!」

と言って中央の金魚鉢を指差す。

「こういうのはコロナの間はできなかったでしょ。ようやく再開したメニューだから絶対頼みたかったのよ」

どうやら中身はフルーツポンチで正解らしい。
間も無くしてもう一つの金魚鉢が後続の団体客へ振る舞われ、みんなでピザが焼かれるまで待機状態。

わたし達のオーダーしていたピザが運ばれて来てびっくりした。
大きいとかじゃなくて、もうほぼパン!
しかも耳の部分がとってもdoughy!
重たいパン生地、しかも白い系のパン生地にそのままマリナーラソースを塗りパンとして焼き上げたような感じ。
写真が撮れなかったことが悔やまれる。
アメリカンピザはクラストがナポリピザと比べて生地が分厚くて、もちもちなのは食べたことある。
でも耳以外のクラスト部分もバッキバキで、今まで食べたことのないタイプのピザに衝撃を受けた。

「お腹空いてるから絶対2スライスは食べるよ!」

なんて余裕をぶっこいていた過去のわたしに教えてあげたかった。
ピザを物理的に流し込むためのビールが必要だったっていうことを。

お腹がいっぱいすぎてしばらく放心状態だったけど、わたし達が一度着席していたテーブルに着席したカップルの女の子がプラカップを落として甲高い音でハッとする。
彼女はコップがガラスだと思っていたらしくビックリして大きな声を出してしまったらしい。
テラス席全員に聞こえるように謝っていたけど、中身は水だしコップもプラカップで良かったねって隣のテーブルのお客さんが笑ってなだめていた。

それを合図のようにわたし達も席を立ち、翌朝の朝食の買い出しへと最寄りのコープへ向かって一日を終えることにした。


調味量は基本量り売りなコープ、欲しいものを欲しいだけ買うスタイル、好きだ。


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