フィルムカメラ

unusual #4

フィルムカメラ

Sri Lanka

Contributed by YUKA

Trip / 2019.12.13

東京で暮らす日々の中で、心に少しでもゆとりをもって生活できるように、刺激を求めて世界各国を旅してきたYUKAさん。“非日常生活での経験は、わたしの暮らしへのスパイス”と語る彼女が旅の中で見て、知って、感じたことをフィルムカメラで撮りためた写真とともにお送りします。


#4

海岸通りには生臭い匂いが漂っていた。釣ってきたばかりの魚たちが浜辺のすぐそばの屋台で売られていて、もちろん虫なんかも飛んでいて、衛生面はちょっと信用ならない雰囲気。

道路を挟んだ逆側には"サーフポイントまですぐそこ"というキャッチコピーが売りであろうホテルやらゲストハウスがちらほら。その中でも際立ってお洒落だったり、雰囲気が良かったりするホテルは、大抵スリランカ人ではないオーナーが営んでいるんだろうな。なんて思いながら通りを歩いた。

どうもスリランカには、イギリス人のオーナーが多いイメージだった。旅行者もアジア人より圧倒的にヨーロッパ人が多い。

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ちょうど漁から船が帰ってきた。

手作り感100点満点の船には7~8人の漁師が乗っていて、岸から興味津々で見ていると「もっと近くまで見においで」って手招きしてくれた。

覗いてびっくり! 船の中央には細長いくぼみがあって、そこに魚がわんさかと。もともと船が大きくないので簡易的な生簀と漁師の座る位置、立ち位置の境界線が曖昧。何人か生簀の中にいてもおかしくないプチカオスな漁船だった。

漁師の人たちはカメラ片手にツーリストって一目でわかるようなわたしにすごく親切で、魚持って帰るか?って。

危うくフレッシュなお土産が増えるところだった。

Weligamaは大きく分けるとスリランカの南海岸に位置するので、乾季と雨季関係なく一年中波があってサーフィンができると聞いていたが、雨季よりのポイントだったので海もそんなに綺麗ではないし、波もワイドで切れ目で乗るくらいしかできなそうだった。

乾季になるとパキパキの波が割れて、海の透明度もあがり、サーファーや海水浴客で賑わうみたい。

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Galleに戻ってきて、再び町歩き。気になっていたミュージアムなんかに行ってみた。

Galle Fortの旧市街と要塞は世界遺産なだけあって、街はヨーロッパ調の建物や、ミュージアムが多く、要塞の中の旧市街は完全に観光客向けの街だった。要塞の中に入るにはトンネルをくぐる必要があって、出入口はそこしかない。向かいは海だしね。







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「コロンコロンコロン」

ミュージアムの中で、何か木製の小さなものを転がすような音が聞こえた。奥へ入っていくと、ひらけた空間があって素敵なサリーを見に纏ったおばあちゃんが一人ポツンと座って何かを作っている。

わたしが近付いてくるのに気付くと、目線を上げ少し微笑んで、言葉は発さずにまた黙々と何かを転がし始めた。



音の正体は、数えきれないほどの木でできた糸巻きがぶつかる音だった。
編みたい箇所に針を刺して糸を引っ掛けて糸巻きを転がして、目をつぶってでもできそうなほどのスピード感とリズムよく動く手は美しかった。

わたしが持っていたフィルムカメラは、太陽の下でしか光が採れないので、この薄暗い室内で果たして写真が撮れているのか心配だった。現像してこの写真を見たときに写真が生きてるってこういうことなんだなと思えたお気に入りの一枚。

「戦場にも持っていけるカメラだから、絶対に壊れない、持って行きな」と先輩が潔く貸してくれて持って行くことになった繊細そうな重いフィルムカメラ。

何百枚もの写真を携帯で簡単に撮ることができて、ライブラリーには何千枚もの写真を保管できて、写真を撮ることにあまり意味を感じなくなっていた最近。フィルムカメラだと必然的に手間がかかるので、一枚一枚を丁寧に撮らざるを得ない。本当に切り取りたいその瞬間だけを残すように心がけた。シャッターを切る瞬間を大切にできるからこそ、その時の気持ちもちゃんと思い出せるし、一枚の重みを象徴するかのようなあのシャッター音が心地いい。

手間も重みも愛おしくもえるくらいに、リアルな色と細かい描写で残してくれるんだね。



どの国のどんな場所でも、太陽が沈む瞬間は美しい。


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