it’s been a while

Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #47

it’s been a while

Contributed by Yui Horiuchi

Trip / 2023.06.22

海外へ何度行ったって、旅慣れなんてない。旅で出会う全ての人にフランクに接し、トラブルだって味方につける。着飾らず等身大で、自分のペースで旅を楽しむアーティストYui Horiuchiさんが、サンフランシスコからポートランドまでの旅の記録。

#47

疲れのせいもあって岩のように寝返りも打たず、寝た時のままの姿勢で目覚めた朝。
全身が凝り固まっていた。ベッドに寝たまま伸びをする。
アメリカの標準的なベッドが大きいおかげで大の字で伸びをしても手足がギリギリ出るか出ないか、足指だけちょこっとブランケットからはみ出るとすかさずに犬がやってきて足の匂いをくんかくんか、濡れた鼻で足指を突きに来る。

目が合うとじぃーっとキラキラの瞳をこちらに向けて瞬き一つせずに『あっさごっはん!』という訴えを顔全面に押し出してベッドサイドで待っていた。

犬に朝ごはんをあげて簡単な朝の散歩をIrving parkで済ませてくる。
一度Airbnbに戻ってきてから、今度は自分たちの世話をする番、
「朝ごはんどうする?」
「クロワッサンが食べたい気分」
「じゃ時間ないしとりあえず車に乗って道中探そう」
そう言って乗り込んだ車内ではGoogleマップの検索窓にクロワッサンやベーカリーなどと入れて検索結果の中から気になった候補の3件ほどのレビューを声に出して読み上げる。
結局わたしのGoogleマップのアナライズに従って、マッチング率が一番高いとこに行くことにし、口頭でナビをしながらTwisted Croissant に向かった。

車は裏道に止めて小さなカフェのような店構えの店内に入ると残念ながら早々にクロワッサンは売り切れたとか。
仕方がないのでジャムとクリームチーズがたっぷりのクロワッサンドーナツをオーダー。
朝晩が少し冷え始める晩夏のPDXの朝にはこういうヘビー級に甘いものと深煎りのコーヒーの相性がいい。



朝食はこれで十分といったところだけど、少し近隣を見て回ろうかなんて言ってたらベーグル屋さんを見つけてしまい、ここでも大好きなloxのベーグルサンドをオーダーしてみた。



正直、ベーグルそのものもフィリングのクオリティもLos Baglesのが上だと思い、友人に伝えると同意見だったので安心する。

実は今日わたしにとって重要なミーティングが一件あって、このためにPDXに来たと言っても過言ではない。
約束の11:30amに間に合うようにsecond breakfastを酸味の強いブルーマウンテンを流し込みダウンタウンへ向かった。

11:30、ミーティング時間ぴったりに指定された場所で友人にドロップしてもらい、2時間充実した顔合わせののち
『終わったよー』
そう友人にテキストを入れる。
『今犬と公園の散歩してるよ』
返事を確認してからわたしのいる場所の左隣にある公園に向かって顔を上げた。

公園の入り口の歩道に面したところで見慣れた赤ひげと犬の二人連れがこっちを向いていた。
道路越しに目が合い手を上げてそっちに行くねというジェスチャーで歩道で待ってた彼らと合流した。

話を聞いたらしばらくそこに立ってわたしが出てくるのを待っていたらしいけど、わたしも二車線の道路を挟んだ付近で15分くらいミーティング相手と立ち話してたと言うと、『あれ? 全然気づかなかったぞ?』って二人ともキツネにつままれたような顔になり、わたしがそれだけ街に馴染んでたってことにしておいた。
散歩の続きをしがてら、ミーティングでの収穫やお昼に何を食べたいかなど話しながらダウンタウンを少しぶらついてみる。

「時間配分完璧だったよ、YUIをドロップしてから一回家に戻ってゴルフを1時間してまた犬をピックアップしてダウンタウンに戻ってきて犬の散歩をし始めようとしたら、ちょうどYUIから終わったって連絡あってさ、顔あげたら会えたっていう、めっちゃ効率よく戻ってこれた」
「なら良かった、待たせてたら嫌だなって思ってたから。ダウンタウンでなにかしたいことある? 」
「特にないんだけど、兄貴がOswegoで夕飯一緒に食べないかって言ってるんだよね、YUIは?」
「会いたい友達が一人いて、夕飯前に会えたら会いたいと思ってるんだよね」
「へえ、どこで会う予定?」
「まだ決めてないけどPDXの南の方に住んでるんだよね、赤ちゃんいるから家まで会いに行くのがいいかと思ってるんだけど時間分かったら連絡するとは言ってあるよ」
「Oswegoに南下途中で立ち寄れるかも、5分くらいしか時間取れないかもだけど大丈夫なら住所教えて」
「あ! うん! わたしが2016年に初めてPDXに来た時、彼女の結婚式に呼んでもらったのがきっかけなんだよね、だから一目でも会いたいと思って、だから5分あれば十分、ありがとう」

お昼ご飯を食べる場所はSushiと検索して営業中の近隣の寿司屋をググってみた。
Mirakuteiという聞き覚えのあるレストランが近くにあったので向かってみる。
「あ、ここ来たことあった」
案の定友人が以前おすすめしてくれたレストランの一つだった。



オイスターが有名なnorth pacific、一度北カルフォルニアで牡蠣をオーダーした時は火が通ってるものだった。
ここは生食用が提供されているようだったので、試してみたいと思って頼んでみたら大正解。
味も食感も新鮮そのもの、一緒に頼んだToday’s specialのロールでさえも都会らしい小ぶりな巻きでカトレア添え、とっても美味しかった。

寿司屋では瓶ビールのキリンで乾杯し、タップバーが車を停めた近くにあったのをわたしも友人も見逃していなかった。
食後の一杯をひっかけにBrewery 26まで徒歩2分、何がタップに入ってるか想像を膨らませて入店する。



この夏はずっとフルーティー縛りのクラフトビールばかりを飲んでいたので、ここでもバーテンさんのおすすめで選んでもらった。
話を聞いていると彼女もアーティストだそうだ。
アート一本じゃ食べていけないので、色彩学のMFAを取って子供たちに教えるために一時期Corvallisに住んでいたことがあるらしい。
付き合っていたパートナーの転勤を機にPDXには移ってきたみたいだけど、ここではバーテンが副業というわけだった。
お兄さんがアーミーで日本に駐在していたことがあるというので、駐在期間に日本には遊びに行った? と聞くと、お母さんと二人で日本に遊びに行ったことがあると教えてくれて、彼女のお母さんが街や電車までが本当に静かで綺麗で感激し続けて呆然としていたというエピソードを聞かせてくれて、日本国民を代表して満喫してくれたようで嬉しいと返しておいた。

ビールを飲みながら時間を気にする友人。
時刻は16時5分前、確かご飯の予約が17時半。

「そろそろ行かないとね」
身支度をしながら、バーテンの彼女に
「いつかまた日本に遊びに来てね」
そう言ってタップバーを後にした。

急ぎAirbnbで汗を流して着替え、ちょっとだけおめかして準備万端。
まだ少し濡れてる髪はバンダナで町子巻きをして車に乗ってる間に乾くであろうと逆算する。
わたしの支度は誰よりも早くて有名なので、犬と二人玄関で仁王立ちしながら運転手を待ち構えていた。

見事約束していた16:45に旧友で、今は二児のママとなった友達に実に6年ぶりにSay Hiする夢が叶う。
パパも友達なので会いたかったけど、ツアークルーをしている彼は早朝に叩き起こされてそこから急遽ツアーに出発してしまったらしい。
わたしも以前からそういった友人の状況には慣れていたので
「次日本にツアーに来た時か他の国行ってるタイミングで会えるからいいよ」
なんて笑って言って、子連れでツアーに同行できなくなってしまっていた彼女の方に今回は断然会いたかったのだ。

上の子は生まれた時から写真だけ見ていたけど、下の子が生まれてからしっかりしたお姉さんの3歳児になっていた。
人見知り全開で目が合わず最後までお話しできなかったのが心残り。



次女の3ヶ月の赤ちゃんは終始穏やかで、青いロンパースを着ていたからか、まだ生えそろっていない産毛オンリーのふわふわ頭のせいか、連れてきた友人が終始男の子と間違えていて可笑しかった笑
それ色彩学とちょっと関連してるよねって思ったりした。



嵐のような滞在を(それでも結果15分くらいはお邪魔した)快く受け入れてくれて、写真だけ撮ってバイバイすることになってしまったけど、いつかまた会えた時に笑って話せるようにこの旅での思い出が一つ引き出しに増えた感じがした。



急ぎOswegoに向かう途中、スタバの前にある看板を見つけて
「あれってここ(カフェ)で読書できますよってサイン?」
と何にも考えず友達に聞くと
「あはは違う違う! この先に図書館があるってサイン! フリー読書スペースの案内だったら面白いね!」
自分でもよくよく考えてみたら突拍子もなくアホなことを言ったもんだと呆れてしまった。



夕飯にジョインさせてもらったピザ屋さん。
OswegoというとポートランドのNBAチームのメンバーなどが住居を構えているなど、超高級住宅街として有名らしい。
友人の4歳の姪っ子にも人見知りをされたので、メニューの裏にエルサの絵を描いてあげたら気に入ってくれたようで速攻色塗りに没頭していた。
あまり話さずにご飯は食べすすめていたものの、食後のデザートにスプリンクルのついたチョコドーナツを分けてあげたら最高に可愛い照れ笑いで
「もらっていいの?」
と目を輝かせていた。
今朝のベッドサイドでの出来事を彷彿とさせる。
甘いもののチカラって最強!笑



時刻は午後8時、メインの滞在日の中日も五感と胃袋にたくさん詰め込んだ1日となった。
Oswegoからダウンタウン、ダウンタウンからまた橋をいくつか渡ってEliot地区に戻る。
通り過ぎていく街頭の灯りが新しい思い出の数々のようにわたし達の頭上を照らしては通り過ぎて行った。



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