とあるATMで

This Time Tomorrow #22

とあるATMで

Laos / Luan Prabang

Contributed by Natsumi Chiba

Trip / 2019.08.20

東南アジアでの旅を記録した千葉夏海さんの旅連載「This Time Tomorrow」。第22回は、ラオス/ルアンパバーン編です。旅先でのリアルな様子をお届けします!


トゥクトゥクを降りてすぐさまATMに走る。空港の入口外にいくつかのATMがある。私が使ったATMの前に背の高い男性がいた。彼の後ろに並ぶ。

振り返ってATMから出てきた彼とアイコンタクトをとると、すぐカード挿入口や機械の上や周辺を探したけどやっぱりない。一応空港に入ってカードは届いていないかとお姉さんに聞いてみたけど、英語が通じず「はぁ?」と嫌な顔をされた。

お金を下ろしてカードがないことに気付いてから3時間以上経っていた。焦りより諦めの感情が大きく広がり始める。どうしようかと入り口の方に目をやると、ATMに居た男性が友達2人に囲まれて、何やら慌てた様子でいるのが遠くからでもわかる。彼と目が合った。

「ねぇ、ぼくのカード持ってない?」
「えっ?」
「カードがないんだ。きみ、ぼくのあとにATM使ったでしょ?」
えっ?この人もカードないの?と驚いた次の瞬間、私が盗ったと疑われちゃまずいと思った。
「持ってないよ!私3時間前くらいにここに着いて、このATM使ってホステル行ったけど、カード失くしたことに気がついて今戻ってきたんだ。ATM見たけど、私のカードもあなたのカードも何もなかったよ」と必死に説明をした。
彼は本当に焦った顔でポケットに手を突っ込み、お腹に巻いたマニ―ベルトを確認する。焦りすぎて手が震えているようだった。

「私も自分のカードないんだよ」と改めて声にだすと失くした事実がより事実になった。
「そうなんだ。でももう一回カバンの中とか見てくれない?」と彼は焦りながらもていねいに私に話しをしてくれた。

ATMの前で困っていると、ひとりのラオス人男性が声をかけてくれた。2人ともカードを失くしたことを伝えると、ガラスの壁に貼ってある番号に電話してくれた。彼によると明日の11時に市内にある支店にきてとのことだった。カードが機械の中にあるかも、中にカードが2枚あるかも分からないらしい。念の為カードを止めておくことにした。

彼の友達の1人にこんな出会いはなかなかないから、夜一緒にナイトマーケットにでも行って飲みにいこうと連絡先をきかれた。

私たちも一応交換しておいたほうがいいね、とカードを失くした彼ともメッセンジャーを交換した。

彼はベルリン出身。これがロバートとの出会いだった。







To Be Continued.


BGM : Believe Me / Madness


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