ビールとウーバー #31
チョコ、なし
Contributed by Kaito Fukui
Trip / 2022.02.14
#31
いつかの日のこと。
図書室の角に置いてある
はだしのゲンコーナーの前で
次の巻が飛んでる…とキョロキョロ探していたとき
「海東くん、これ。はい」
と、図書委員の子がチョコをくれた。
「お、おう。ありがとう!」
学校にお菓子持ってきちゃいけないんだよー
と言わんばかりの目で優等生の女の子が遠くから見ている。
しかし僕にはそんなことより確かめたいことがあるんだ
いや、聞かなきゃおれ!
と「漢!」の文字が心を走る
「ね、ねーねー、これ何チョコ?」
勇気を出して聞いた
「ぎ、義理だから!」
「はんっ❤️」
絵に描いたようなシチュエーション
お昼休みの暖かい光
古本の匂い
さらには、風が吹きカーテンが揺れた
「あ、これ一生忘れねー!」
なんだこのベタな展開は!
「俺の人生!」
彼女は受付へと帰って行った。
昼休みが終わるチャイムが鳴り
みんなが図書室を後にする
彼女の前を通るのが恥ずかしい。
彼女は僕が帰らなければ鍵をかけられない。
「ありがとう!」
彼女にもらったチョコをなぜが本人に見せるように
照れ隠しの仕草がさらに恥ずかしい。
「あ、うん」
え、
めちゃくちゃ冷めた態度で
え、なに?
本当に義理なの…!!?
早くこの袋を開けて、きっと中に入っているであろう
ラブレターを確認せねば!
と、早退。
帰り道、商店街を駆け抜け家に帰る
部屋のドアをしっかり閉める
袋を開ける。
チョコが3つ
苦いパウダーがしっかり
本当に苦いチョコが3つ。
福井少年の一生忘れない思い出
ビール飲んで記憶を美化!
アーカイブはこちら
Tag
Writer
-
Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!