「時間あるね、ドライブ行こう!」- 江田島

To Me, Somewhere in the World #21

「時間あるね、ドライブ行こう!」- 江田島

Contributed by Yoko

Trip / 2022.04.06

「世界一周がしたくて、思い切って会社をやめた」
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。


#21

あまたのゲストハウスで素敵な出会いを経験したけれど、ふらっと立ち寄ったカフェでこんなに暖かい経験をするとは思わなかった。もしかしたら彼らにとっては日常の延長線にすぎないことだったかもしれないし、イレギュラーなことだったかもしれない。それはわからないのだけれど、少なくとも私にとっては忘れられない時間になった。

*

呉港にて。

今回は島から島へ、島旅をすることにした。まずは広島空港から呉を経由してバスで倉橋島へ。そこで1泊して素敵な海岸線と出会いつつ、1時間かけて呉に戻り、この旅初めての船に乗って江田島・小用(こよう)港へ向かう。船内の椅子が、円卓のような形になっていて面白かった。

小用港近く。桜。

目的地・江田島はとても広い。港がいくつもあり、次の宿の迎えが来る港は小用港とはまた別。港から港まではバスで移動する予定だったが、バスが来るまで1時間以上あったので、小用港近くで唯一だという喫茶店に向かうことにした。歩いて15分程度、バックパックを担いでいてもそれほど大変ではないだろう……と思っていたが、だいぶ勾配を感じる坂道の洗礼。その日はとても暑く、坂道手前で躊躇したものの、進むしかないので汗だくになりながら坂道を登った。喫茶店に着いた頃には疲労困憊。一瞬開けるか迷った扉は疲れのおかげで開けることができ、今となっては本当によかった。

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ピザトースト。4つに切れ目が入っているところも懐かしい。

「いらっしゃい」と声をかけてくれた優しそうな店主のおじちゃん、おばちゃん。席に着くと、すでにいらした数人のお客さんと楽しそうに会話をされていた。桜の話、旅立つ若者の話がメインだ。この島は自衛官が多いらしい。話の流れで「桜を見に来たの?」と問われ「(そうではないが)はい」と言ってはみたものの、打ち解けてきたころには「行きたい宿があって来た」と一応訂正しておいた。いつもなら最初の答えで通し、そのまま別れるのだけれど。

いつか実家で食べたような懐かしいピザトーストを頬張りながら、「どこから来たの?」「何しに来たの(目的)?笑」というほうぼうの質問に一つひとつ答えていく。「え!長野なの、家族が住んでたことあるわ」「え!北海道出身なの!なんとまあ」といずれの反応も何だか可愛らしくて、興味を持ってくれたことも嬉しくて、ついつい色んなことを話してしまった。普段はこんなに1から10まで話さないのだけれど。そこにいた方たちの人柄の素敵さも相まって、何だかとても自然体でいられた時間だった。初めての場所、初めての人たちなのに。

エディブルフラワー。

気づけば「食べてみて」とエディブルフラワー(しかも美味しい)をもらい、アイスも「あげる」ともらい、帰りしなのお兄さん(お客さん)には「江田島のコーヒーおひとつどうぞ、楽しんでくださいね」とドリップパックをもらう。先に出たお姉さん(お客さん)も笑顔で優しく声をかけてくれる。

“なんだこの島(喫茶店)は……(素敵すぎる)”と心が温まりすぎていると、「迎えの時間何時?」「まだ時間あるね、ドライブ行こう!」と店主のおばちゃんに思いがけない声をかけてもらう。「嬉しいけどお店……」と言うと「大丈夫、もう人こないから(笑)」と笑いつつ、おじちゃんも「行っておいで〜」と二つ返事で見送ってくれ、そのまま桜を見るドライブへ向かうことになった。

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桜越しの海。

ちょうど満開だったので、道中は桜、桜、桜。そして途中、なんとご自宅にも立ち寄る(笑)。「ここも今満開だから」とご自宅前に車をとめ、満開の桜越しの海を見せてもらったと思ったら、よく手入れされた高台のお庭に連れて行ってくれただけではなく、ご自宅の中までお邪魔することに。「いいから」と、ベランダで冷たい飲み物までもらい、“いったいこの島に何しに来たんだ(何が起きてるんだ)……”と思いつつ、戸惑いよりも楽しさが勝っていた。

「いい島でしょう」「海も山もあるの」「嫁いできたのよ」「人の声がよく聞こえるところだから寂しくないの」と、この島の良いところはもちろん、ご自身のルーツの話も教えてもらいつつ、自分のルーツについても話をする。聞くと、長野や北海道にも縁があったらしく、「長野の人によくしてもらったから」と連れ出してくれたらしい。

しびれ峠。

しびれ峠。桜。

しびれ峠という島の名所にも連れてってもらい、桜を見る。つくしの天ぷらの話で盛り上がると、つくしがたくさん生えているという場所にも車をとめてくれた。道中、集落の場所や基地の場所、星の綺麗さなど、島のいろいろを教えてもらう。そして本来バスで向かうはずだった、目的の港まで一緒に。

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中町港。コーヒーはお店でお客さん(お兄さん)にいただいたもの。

別れ際、もはや抱きつきたいくらいだったけれど大人だったので辞めて(笑)、お礼を言い、問われたので名前を伝えて別れる。実はそれから1時間くらい待ち時間があったのだけれど、たった1時間ちょっとの間に起きた出来事が濃すぎて衝撃すぎて忘れられなすぎて、しばらく放心状態だった。

海外ならついて行かなかっただろうな、という理性や計算や大人としてのいろいろは思いつつ、起きた出来事だけを受け止めれば、ただひたすら心が暖かい気持ちになった。きっとこんな理由の積み重ねで、また旅に出るんだろう。ちゃんと気持ちよくお礼言えてたかな。おじちゃんおばちゃん、あの時お店にいたお兄さんお姉さん、本当にありがとう。江田島、好きだ。

江田島・宿泊したUminosにて。


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