interview: Zach Mueller(Fontaine Cards)

About Time #23

interview: Zach Mueller(Fontaine Cards)

Contributed by Sho Mitsui

Trip / 2021.12.08

1年9ヶ月ぶりにアメリカに旅立った通訳・翻訳家&カルチャーコーディネーター兼英語教師の三井翔さん。著名人からアップカマーまで、アメリカ国内に謎のネットワークを持つ彼にしか見えない、コロナ禍以降のアメリカの「リアル」を毎週お届け。今回はデッキブランドFontaineの若きCEO、Zach Muellerへインタビュー。

#23

皆さん「カーディストリー」という競技をご存知だろうか? トランプのデッキをいかにスタイリッシュかつオリジナリティー溢れる技法でシャッフル出来るかを競うもので、さしずめ、トランプ界のスケートボード・ベストトリック的なノリだと思っている。何を隠そう、トランプ競技のジャンルにマジックとは異なる、この「カーディストリー」というジャンルを作り出したコミュニティーの中心人物がZach Mullerなのだ。

僕がZachと出会ったのはやっぱり2017年。旅行に来ていたZachがCarrotsのディストリビューションを担当しているJeredを通じて連絡を取ってきたのがきっかけだ。


(2017年撮影)

エミー賞受賞経験もある日本人ムーブメントデザイナーHokも一緒だった。当時のZachはストリートウェアブランドオタクのカワイイ22歳。Carrotsの大ファンで、当時日本で先行発売していたX-CARROTSのコレクションを爆買い。AMBUSHへ行って超高級サングラスをゲット。VISVIMへ行ってデニムをゲット...。

攻めるねぇー若者! と思っていたらそれもそのはず、彼はカーディストリー界隈でNO.1の人気を誇るデッキブランドFontaineの若きCEOだったのだ!

彼のリリースするカードデッキは全てエディションであり、限定品。一度売り切れてしまえばもう二度と手に入らない。その希少性が手伝い、カーディスト(カーディストリー競技者)のみならず、トランプコレクターにも絶大な支持を受けている。新作をリリースする度に、アイテムは即完。それを繰り返している内に彼は起業家として、22歳にして立派にビジネスを成立させていた。

日本のストリートウェアカルチャーを紹介しているうちに、「すごいな!Shoはストリートウェア教授だ!」と意気投合し、以降、東京やLAで会っては一緒に食事や買い物をして遊びまくった。


(日本の寿司屋にて。2019年撮影)

LAのマジックショーが見られる会員制劇場「マジックキャッスル」に僕を入れてくれたのもZachだった。


(マジックキャッスルにて。2020年撮影)

そのストリートブランド愛からCarrots, RIP N' DIP, Chinatown Market(現Market), Guess, Brain Dead, Good Company, Babylon等そうそうたるメンツとコラボデッキを作っては即完させ、アニメやホラー映画オタクでもある彼はPink Panther, Halloween, Army of Darknessなどともオフィシャルコラボを実現させた。かと思えば、Matt McCormick, DABS MYLA, Kogan Cult, Gasius等素晴らしいアーティスト達ともコラボしており、カーディストリーとサブカルチャーを繋げる親善大使としても一役を担っている。

















そんな彼が2020年8月、コロナ渦に実店舗をオープン。
デッキブランドとしても新たなフェイズに突入したZachに話を聞いた。

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ここの物件は2020年6月から借り始めたんだ。コロナ渦でカードの製造工場が閉まっちゃったのが原因だった。コロナ渦が明けたら、すぐに動き出せる様に準備しておきたかったんだよね。後ろにどデカいダンススタジオがくっついていて、大家さんがダンス講師をしているんだけど、ディスペンサリー以外の借り手を探していた。そこにウチが飛び込んだわけ。去年は国の規制もあって、単にカードデッキを売る店に終始していたけれど、今年の4月以降はイベントを開いたり、お客さんが来たら遊んでいける様な雰囲気のスポットになってきたよ。



理想の形だよね。お客さんが来て仲間たちと一緒にカードをシャッフルして楽しんでさ。残念ながら今はまだ、新しいデッキのリリース日にしか開店していないんだよね。だから月に1、2回程度かな。もちろんリリースは店舗限定ではなく、オンラインで全世界に向けて行っているよ。ブランドが大きくなってきたから1種類のデッキに対するエディション数も増えてきた。ウチのメインの客層はアメリカとイギリスだけど、第3位はアジア圏だと思う。ここではイベントも積極的に開催していて、例えば"The Fontaine Trials"は2ヶ月半にも及ぶカーディストリー選手権なんだけど、24人のカーディストがそれぞれ30秒の動画を作るんだ。審査員がそこからベスト12を選ぶ。次は45秒動画さ。6人に絞ったら、彼等は1分動画を作る。そこから3人にまで絞ったところで、この店の裏にあるダンススタジオを借りて、ベスト3のカーディスト達の動画をみんなでスクリーニングしたんだ。ファン達も含めてね。そして同日に"Fever Dreams"のデッキもリリースした。



その日のイベントは盛り上がったね。60、70人のファンが駆けつけてくれたよ。因みに優勝者には$10,000の賞金を出したんだ。優勝者はロシア人の男の子だったよ。残念ながらコロナでここには来られなかったけど、オンラインでビューイングに参加してくれたんだ。2、3位の子達にも$2,500ずつ副賞を出した。2、3位の子達は2人ともアメリカ人だったから会場まで駆けつけてくれたよ。親も一緒に招待したんだ。

Fontaineはカーディストリーというカルチャーをある意味作り上げている。ただ、トランプデッキを売るだけのブランドにはなりたくない。良いブランドはいつだってプロダクトの背景に信念があって、それがファンを魅了するんだと思うんだ。だからこういうイベントは必要不可欠だし、全てのデッキリリース日に遊びにきてくれるキッズが少しずつシャッフルのテクニックを上げているのを見たり、彼等が友達になるのを見るのは嬉しいな。彼等がカーディストリーの未来だからね。

Fontaineはずっと僕1人でやってきたんだけれど、去年の11月に幼馴染のChrisをチームに迎え入れたんだ。emailや物流なんかは全て彼が担当してくれている。僕はemailとか、スケジュール管理とかが本当に苦手でさ。後はグラフィック担当としてSteveも雇った。あとは5人ほど若いカーディストをFontaineに迎え入れて、シャッフルする時は必ずFontaineのデッキを使って貰っている。スケートチームみたいなものだね。

この前、UNDEFEATEDとミーティングしたんだけど、面食らってたよ。「こんな世界があるなんて知らなかった!」ってね。正直カーディストリーの認知度は世界的に言ったらまたまだ低いよ。理解できない人も沢山いるだろうね。「え?トランプをただシャッフルするだけなの?」ってね。でも実際にカーディストリーを目の当たりにすれば、分かるはずだ。「スケートボードのトランプバージョンの様なものなんだ!」ってね。カードデッキのプロモーションにはシャッフルのトリック動画を撮影する。SupremeだってTシャツのプロモーションにスケートビデオを使ってるじゃない? Supremeの服を買う人の大半はスケーターじゃないと思うけど、そのカルチャーに魅せられて買ってるわけでしょ? ウチにも通ずるところがあるよね。もちろん、カーディストリー専用のデッキを売ってるんだけど、購入者の80%はおそらくカーディストではないんだ。コレクターとかマジシャンとかさ。

Fontaineを始めた理由? 始まりは、遊びでトランプデッキを作ってみたところからかな。赤に白抜きで"f"のシンプルなデッキを$20くらいで作ってマジックの動画を撮ってみたんだ。16歳の時かな。そうしたら、皆んなから欲しいって問い合わせが殺到してさ。だから"Indiegogo"で、その赤いデッキを増産してみた。そこから徐々に大きくなった感じかな。当時はマジックを中心に活動していて、2014年頃にカーディストリーを始めた。僕ら18、19歳位の仲間が集まって「まって、これってまだ誰もやってない新しいジャンルになり得るんじゃないか?」って気付いたんだよ。カーディストリー専用のデッキを作っているブランドもほとんどいなかった。そこで閃いたんだ。「よし、マジックを辞めてFontaineを本格的なカーディストリーブランドにしよう!」ってね。

Fontaineという名前は"BioShock"っていうTVゲームから影響を受けて付けたんだ。このゲーム、めっちゃ好きなんだけど悪者にFrank Fontaineってキャラがいてさ。で、奴はマフィアのボスだから街中の至る所に"Fontaine Futuristics"っていうネオンサインがあるわけ。


(右上のネオンサインはそのゲームに影響されてZachが作ったもの)

ゲームではアトラスっていうキャラにストーリーをナビゲートして貰うんだけど、最後に実はアトラスがFontaineだったっていう事に気付くんだ。そのどんでん返しが堪らなく好きでさ。「フォンテイン」って響きも好きだからブランド名として採用したんだ。

僕はありとあらゆるサブカルチャーに影響を受けているけれど、Fontaineにとってサブカルは欠かせない要素なんだ。僕は映画オタクだし、子供の時に遊んでたオモチャもいまだに好きだし、90年代後半から2000年代前半の子供用オモチャのブランディングにもとても興味がある。マックのハッピーセットに付いてくるオモチャも山ほど持っているしトランスフォーマーとか、ebayで落札しまくってるよ。いっつも何かしら探している。Goose Bumpsものとか特にね。


(左の壁に飾ってある大量のGoose Bumpsトイズ)

Fontaineも大分成長してきて、好きなブランドと好きな様にコラボレーションすることが出来る様になってきた。ライセンシング担当者もいるし、コネクションも増えてきた。ストリートウェアブランドとのコラボレーションは一通りやったし、何人かのアーティストともコラボを実現させた。今の僕の目標は出来るだけ自分の好きな映画とのコラボデッキを作る事さ。「グーニーズ」とか「チャーリーとチョコレート工場」とかね。面白いのはカーディストのキッズ達は僕の好きなカルチャーについてそれほど精通していないってことなんだよね。



例えば、この前コラボした"Army of Darkness"っていう映画は1993年に上映されたものだけれど、アクションコメディー/ホラーコメディーの傑作さ。このデッキがきっかけでキッズが映画にも興味を持ってくれたら嬉しいなと思ってる。CarrotsやBrain Deadとコラボした時に、カーディスト達がCarrotsやBrain Deadの服を着始めた事と同じさ。カーディストリー動画内で使っている音楽とかにも興味を示し始めてくれる。だから、キッズに教えてあげたいんだ。「ヘイ!Halloweenって映画面白いぜ!マイケル・マイヤーズの名前は聞いた事があるかもしれないけれど、実際に映画見てみなよ!」ってね。

Fontaineのデッキがそのきっかけになったら最高にクールだなって思ってるよ!

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ZachはFontaineを通してカーディストリーというカルチャーを作り上げているだけでなく、自身の好きなサブカルチャーの全てを若きカーディスト達に広めているのだ。その影響力を26歳という若さで持っているいわば本物のインフルエンサーだ。4年前に原宿のキャットストリートで出会ったストリートウェアキッズは、コロナに負ける事なく、少しずつ、でも確実にFontaineというニッチかつクールな王国を築きあげたのだ。


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