グレイなロンドン

Gloomy day All day #7

グレイなロンドン

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2023.06.09

フォトグラファー/ライターの上野文さんが、過去のイギリス留学の様子を綴ったContainer WEB人気連載『Greenfields I'm in love』。全74回の連載を終え、今回からは2021年の冬に過ごしたロンドンでの2週間をお届けします。大好きなロンドンでの、小さな「きっかけ探し」の旅。

#7


ロンドンの旅、4日目。今日はAngelの続き。
Angelは飲み屋やコーヒーショップも多いけど、子供が好きそうな雑貨屋さんもたくさんあって、家族連れをよく見かける。可愛い街並みだけどおしゃれさより住みやすさを感じる、そんなAngel。

少し話は脱線するが、わたしは今PR会社で働いている。ちょうどイギリスに来る前にアサインされた、ホテルショコラというカカオのブランドを見つけた。
ホテルショコラはイギリスではもちろん、ヨーロッパ全体でもすごく人気なお店。今までちっとも気にしてなかったけど、ここのロゴがついたショッパーを持つ人は本当にあちこちにいるし、Angelにも路面店があって、わたしはここのチョコレートを作っているわけでも、日本に持ってきたわけでもないくせに、なんだか鼻高々だ。


Angelには、有名な日本食屋さんもある。お箸を器用に使うお姉ちゃんが弟にレッスンをするシーンが見られた。


そのあとは51番にのって、ボローマーケットへ。今日もロンドンの空はグレイ。たまに、ポツポツと雨が降る。この街ではこんな雨は気にならない。

ボローマーケットでは、マッシュルームのペーストを販売する男の子たちと会った。2人のうち1人は、少しアジアンな顔立ちだ。驚いたことに、彼は日本人とのハーフで、名前は弟と同じく、“ひさし”だった!





滞在させてもらってるきょんちゃんは、マッシュルームが大好きだから、一瓶購入。帰って渡すと、とても喜んだ。



ボローマーケットで働く人たちはとってもフレンドリー。お客さんともよく話す。

1人で美味しいパエリアを頬張り、マーケットを後にすると、すぐそばのコーヒーショップで腰掛けに座るおじいさま2人がわたしのカメラを指差し、「撮ってもいいぜ!」と声をかけてきた。

おしゃべりな2人との立ち話は止まることを知らず、わたしはしばらくそこにいた。ロンドンで会った人々にこの街を表す一語を訪ねて回っているのだと伝えて、カバンに入っていた紙切れを渡してみた。右手のマイケルという名の男性は悩むことなくスラスラと、“Bobby Moore”と書いた。誰かと聞くと「知らないの? あとで調べてみなさい。彼はまさにイギリス人そのものなんだから」と言う。調べてみたら、フットボール選手だった。なるほど、マイケルだって相当なイギリス人だ。
一方、左手のジョンは、難しい顔をして、しばらく考えたのちに“Be Kind”と書く。が、程なくしっくりこない様子で斜線を引いて、あーだこーだとぼやきながら難しい質問だと言って再び眉をハの字に曲げた。ジョンを横目にマイケルは「アヤ、彼は頭の回転が遅いから、時間がかかるんだよ。中でコーヒー買ってきなさい」と言ってきた。
わたしは言われるがまま、コーヒーを買いに店内へ。2人も飲んでいたエスプレッソにした。こっちの人がエスプレッソを飲むところはよく見かけるが、わたしは買ったことがなかった。


難しい質問だ!と悩むジョンと、小馬鹿にするマイケル。


程なくして、小さなカップに入った墨汁のように濃い色をしたエスプレッソが手渡される。
2人の元へ戻っても、ジョンはまだ答えが見つけられないでいて、マイケルは全く呆れたと言わんばかり。2人の正反対のキャラクターは面白いし、私はその間に入り込んで、なんだか心地よい。
結局ジョンは、思考の末、小さな字で“Grey”と書いて紙を返してくれた。Grey。わたしもロンドンはグレイだと思う。とても気に入った!

そうそう、初めてのエスプレッソは、想像以上に苦かった。チビチビと啜りながら、彼らから戻ってきた紙を手に歩いていると、エスプレッソが溢れて紙にコーヒー染みがついた。おかげで、この紙を見たらわたしは色々と思い出せそうだ。


ありがとう、マイケルとジョン。また会えたらいいけど。




つづく!



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