SANDIEGO ー TIJUANA

長い陽が落ちる、短い夜のはじまり。

Contributed by anna magazine

Trip / 2017.11.15

10日間のロードトリップを終えてロサンゼルスに戻った。

クルマの運転はしばらくいいかな、そう思っていたがまだまだ移動したくて仕方がなかった。

歩きたいな歩きたいな、どこかあてもなく歩きたい、私はサンディエゴ、そしてメキシコを目指すことにした。

ロサンゼルスのユニオンステーションからサンディエゴ・サンタフェまで列車で3時間弱、パシフィックライナーは海沿いをひたすら走る。波打つ水面を光が反射して散る。逆光の白い世界を見ていたら、光のホワイトアウト、いつの間にか眠っていた。列車の旅は穏やかでいい。

サンディエゴの中心、観光客や地元の人、老いも若きもたくさんの人が集うガスランプクォーター。いろんなところから溢れる音楽、隣の席にいる恋人たちの甘い声。夏の夜は短い、すぐに明けてしまうから。

翌日はトロリーに乗って国境付近へ行くことにした。ダウンタウンを抜け、大きなトラックがコンテナを積んで行き交う港を過ぎ、トレーラーハウスが集まる住宅街を追い越して、着いたのは小さな駅。

そこから歩いて3分、チェックポイントに着いた。国境を越えるときはいつも少しだけ不安。しかし、ここはあっけにとられるほど明るく簡単に終わった。X線検査も何もなく、「Hola! 元気? 今日はショッピング? 気をつけてね」

国境の街、ティファナは少しだけ古びていて、カラフルな建物が並んでいるけど、どこか色あせているような、退廃的な雰囲気を醸していた。

夜には夜の街になってまったく変わるんだろうな、なんて思いながら歩いた。

お昼はどこで食べよう、何を食べよう、ウロウロしていた私に「ライカ? いいね。いいね」とおじさんが声をかけてきた。

本物は初めて見たよ、とスマートフォンでカメラの写真を何枚も撮っているおじさん。写真が好きで、タブレットの中の写真を何枚も見せてくれた。どうやらタコス屋さんのオーナーで、行き交う人みんなにご機嫌な挨拶をしている。

ランチはここで食べようと決めた。

「今日はいいマーリン(カジキ)があるんだ。悩んでるならこれだね」

すすめてくれるままにマーリンのタコス。フライではなく炒めただけの思ったよりあっさりした味付け。でもボリューミー。しかもふたつ。マヨネーズたっぷり。そしてサルサソースとチップス。

「ここからタクシーで40分、ロサリトに行くといいよ。いい出会いがあるはずだよ」

マーリンのタコスがおいしかったから、素直にロサリトに行くことにした。

ビーチが南北に延々と続くその街は、ただひたすらに開放的だった。

ビーチではしゃぐ子供たちと、パラソルの下でそれを見ながら頬をよせあう両親。この街の代名詞、ロサリト橋の下で抱き合う若者は、少し照れて離れるけれどまた抱き合う。彼女は少し歯がゆそうに彼のシャツに手を伸ばす。青春!

有名なマタドールだったという老人が昔の写真を見て言う。

「これは全部昔のこと。またおいで、ひとりでこないで次は家族と一緒においで」

ティファナに戻るとどこから集まったのか流しのマリアッチが大勢いた。レストランやバーに歌いに行くのだろうか。後ろ髪を引かれる気持ちを抑えて歩く。

夜には帰ろうと思っていたけど、チェックポイントに着いたときはもう暗くなりかけていた。向こうに見えるたくさんのテールランプの先はアメリカ。

長い陽が落ちる、短い夜のはじまり。

写真・文:相馬 ミナ

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