A Spell On You #20
セーヌ川、きらりきらり
Contributed by Aya Ueno
Trip / 2024.10.15
#20
あちこち散歩していると、気がつけばもう外は真っ暗。
最後は、セーヌ川沿いを散歩して、またキラキラと光るエッフェル塔を眺めた。20歳で初めてパリへ来た時、橋のふもとのちょうど今立っているところくらいにあった屋台でクレープを買ったのを思い出す。たっぷりのクリームやフルーツが盛られた、日本の太いクレープとはまるで違う。パタパタと三つ折りにされた、ミニマリストみたいなそれだ。
私は具沢山の日本のクレープが結構好きだ。メニューには多少トッピングの入ったクレープもあったのだけれど、せっかく本場に来たんだからと、砂糖だけまぶされた寂しいシュガークレープを選んだ。……あれは本当に大したことなかったな(笑)。大体、明らかに外国人が観光客に向けたようなお店だった。しかしそれもまた、いい思い出だ。
まりかとあや
考えてみれば、セーヌ川にはあまりにもたくさんの思い出が詰まっている。
例えば留学中、ロンドンからまりかを尋ねて、往復27ユーロくらいの夜行バスで行った日の、朝6時のセーヌ川。あたりは霧が出ていて、川と空気の境目が穏やかで、清らかだった。
夏、酷暑の中、まりかと一緒に浴衣を着付けしてもらって、川辺を歩いた時もあった。浴衣でパリを歩き回るのは、きっとあの日が最初で最後だろう。シテ島付近のセーヌ川には、護岸壁にロッククライミングのホールドみたいなものがついていて、ねるは道を歩かず、その壁を伝って歩いていた。
冬は、クリスマスマーケット。チュイルリー公園まで、川沿いを歩いた。今となっては何が楽しかったのか分からないけど、ずっと笑い転げていた。河岸でねるとまりかとわたし、3人ぎゅっと並んで写真を撮った。
パリのど真ん中を突っ切るセーヌ川は、あちこちで表情を変えながら、わたしたちのパリの思い出に点在する。どっしりと構える海とは違うのだけど、いつも隣で緩やかに流れながらそこにいるのだ。
最後の晩餐は、お店を決めていなくて、結局川の近くにあった、小さなフランス料理屋さん「Les Marches」でディナーをした。現地の人で賑わう、なんともアットホームなお店。予約をしていなかったけど、運良くテラス席に座ることができた。まずは乾杯。ランチのフォアグラがまだおなかを支配していたので、シードルですっきり浄化させた。注文は読めないので、いつものように、まりかに訳してもらう。程なくして料理が届く。白身魚のポアレ、付け添えに大量にインゲンと、なんともフランスらしい。ポアレはソースが濃厚だが、レモンを絞って爽やかな後味。美味しかった。そしてとっても楽しかった。
この旅、最後に見たエッフェル塔は、残念なことに、これ
パリ、最後の夜は、名残惜しい私たちの間を、ゆっくりと時間が過ぎていく。次はどこへ行こう、アメリカなんかどう? ヨーロッパばっかりの私たちにとって、全くの未知の世界だ。私たちがアメリカに行くなら、きっとLAじゃなくて、NYだ。
この、アナログに切り替わる広告が好き
全部で10日間の旅。日常の10日間は大概あっという間だけど、旅中のそれは、また違う。あっという間だけど、カメラロールを見たら、日本を出た日がうんと遠く感じる。トランジットのパンチ強めなスリランカから始まって、つむちゃん夫婦に会えたフランクフルト、なあみんと再会したニース、そしてまりかと2人っきりのパリを巡る間に、また色んな景色、味、感情を知った。
それになんと言っても、まりかとこんなにたくさんの時間を過ごせたのが嬉しかった。社会人になって大人びたまりかに反して、自由度が増してしまった(自覚あり)私と過ごす10日間はさぞ大変だったことだろう。だからさっき、次はどこに行こうかなーと言ってくれた時は、ホッとした(笑)。
帰り道、ああ、あの大荷物をどう荷造りしようかと考えるまりか
そんなこんなで、旅は終わり。わたしの連載3本目となる「A Spell On You」は幕を閉じ、嬉しいことに4本目に続く。次は、海外初となるおばあちゃんとの波瀾万丈、タイの旅だ。
読んでくれた方、ありがとう。
そしてきっと、またね!
#Gloomy day All day
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Aya Ueno
兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。
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