The Second-Hand Shop #2

世界のリサイクルショップ -イタリア編-

Contributed by Fumito Kato

Trip / nov.28.2019

フォトグラファーFumito Katoさんによる新連載「The Second-Hand Shop」がスタート。雑誌、広告などの撮影の傍ら、世界各地のリサイクルショップを巡り、その国のカルチャー、埋もれゆくプロダクトの発掘をライフワークとして活動している彼が、今回訪れたのはイタリア。旅先で出会った魅力的なヴィンテージアイテムや食べ物の数々は、必見です。


#2
10/5(Sat)
朝4時過ぎに起床。シャルル・ド・ゴール空港のターミナル・シャトル(CDG-VAL)の駅は、ホテルの目の前なので、難なくターミナル2に到着した。

今回利用するeasyJetは、数あるLCCの中でも若干値段が高いが機内持ち込みの荷物規定に重さの上限がない。よって、規定内サイズのバックパック1つに全てを詰め込む。カウンターでのビザ・チェックも必要なかったので、スムーズな印象。多くの国ではEUの複数の国を訪問する際、シェンゲン・ビザが必要になるが、日本のパスポートは90日以内の滞在であれば不要。本当に助かる。

9:35
カターニア空港に到着。旅の恒例になっている空港内のタバッキ(タバコ屋さん)をチェックをする。ヨーロッパには、clipperライターのコレクターが多い。ノベルティ/地名プリントのライターが数多く販売されているからだ。カターニア空港ではシチリア島の紋章・トリナクリアがプリントされた、カラフルなものが販売されている。あいにく、この日は発見できず。まあ、帰りのフライトは北京乗り継ぎなので、買っても没収されてしまうのだが。(中国は乗り継ぎであっても、機内へのライターの持ち込みが出来ない)


昨年発掘したライターBest3。左:フランス製のORFLAMはアントワープの移民エリアのフリマで購入。右:Ciaoはイタリア/フランスでよく見かける イタリア製のライター。STONE/ROCK という渋いシリーズの旧カラーと思われる。ちなみに、中東の各空港は何本ライターを持ち込んでもお咎めなしな上、GITANESが免税店で売られているので、大好きな経由地(遠いけど)。

バールでカフェ・ルンゴを立ち飲みした後、レンタカーのピックアップ・エリアへ。前回ここを訪れた際は、車をピックアップするのに1時間以上待たされた。ちょうど休暇シーズンだったということもあるが、その際利用したのが比較的値段の安いレンタカー会社で、追加の保険代などの設定が曖昧であり、窓口で揉めている人が多かったという理由もある。

よって、今回はその向かい側にあるレンタカー会社で予約。値段は多少張るが、保険代の設定も明瞭で10分少々でピックアップ完了。借りた車は5速マニュアルのフィアット・パンダ。昔のモデルはかわいいけど、壊れる印象しかなかった。
現行のモデルは、サイズが少し大きくなったが、相変わらずエンジンの排気量はたったの900cc。しかし、これがマニュアルだと本当にキビキビ走る。高速道路での130km/h走行も快適そのもの。燃費も良く、荷物もたくさん積めるので、いつもこの車を選んでしまう。

イタリアでは、多くのツーリストがコンパクトカーを選択する。窓口では、スタッフが「無料で中型/大型車に変更してあげるよ」と、お客へオファーする光景をよく目にする。しかし、ほとんどの返事は「No Grazie」。そんなことをしたら、旧市街の狭い車道で、すれ違いと縦列駐車で苦労することをみんな知っているのだ。快適なクルージングよりも、燃費が安く済むことが歓迎される。バカンスであろうが、ツーリストたちは極めて合理的だ。


旧市街を生活圏としている人々の車は極めてミニマムだ。狭い路地や縦列駐車を縫うように走ることができる機能のみ。そして、本当に物持ちのよい人が多い。

19時にエトナ山の麓、ブロンテの友人宅へ行く約束をしている。ブロンテまでは、カターニア市街から車でおよそ1時間。リサイクルショップを巡る時間は充分にあると思われるかもしれないが、イタリアにはシエスタ(長いお昼休憩)をとる習慣がある。ほとんどのリサイクルショップが昼過ぎから夕方まで店を閉めてしまうので、なるべく午前中に店を巡らなければならない。幸いにもカターニアはそこまで大きな街ではないので、移動時間はそこまでかからないが、特に目ぼしいものは発見できず。13時過ぎに現地のsellerとの待ち合わせ場所の近くに車を停めた。


午前中に訪れたリサイクルショップでは、骨董市も同時開催。期待するも、残念ながら収穫なし。

昼食をとるため飲食店を探すが、付近のトラットリアはどこも閉まっている。秋晴れの土曜日という格好の書き入れ時にも関わらず、だ。 こんな時はいつだって開いているケバブ屋にいつも助けられる。しかし、それすらもこの付近には見当たらない。仕方なく、大きめのバールへ向かった。海が近いのと、付近に飲食店がないからか、店内は大混雑。初老のウェイターたちがひっきりなしに動き回っている。パスタがメニューになかったので、アランチーニ(ライスコロッケ)を注文。いわば、巨大な揚げおむすび。1個でお腹いっぱいになる。偶然入ったこの店は、カターニアでは有名な老舗バールだったらしく、ドルチェのバリエーションが豊富だったので、追加注文を試みるが、キャパオーバー気味な老ウェイターは私の注文を忘れてしまったらしい。運ばれてくる気配はなさそうだ。時間も迫っていたので、退散した。


暑いシチリアに、これほどこってりとしたファスト・フードがあることに、名古屋育ちの私はシンパシーを抱かざるを得ない。具はラグー/ボロネーゼのオーソドックスなものから、シチリア特産のピスタチオまで様々である。大きさは握りこぶしくらいで、一つ2〜3ユーロ程度。

現地のsellerとは、イタリアのメルカリのようなサイトで知り合った。Paypalでの支払いや国際発送に対応してくれる親切なsellerはごく稀であり、このような取引の場では、銀行振込/国内発送、または直接手渡しでの取引がほとんどだ。

14時ちょうどに待ち合わせのカターニア警察の門の前に着いた。しかし、何分待ってもそれらしき人物は現れない。思い切って、門の横にある詰所で聞くことにした。

私「ここで、ジュゼッペと待ち合わせしているんだけど」
警官「ジュゼッペの名字は?」
携帯で彼の名前と住所を見せる。
警官「OK, ちょっと待って。呼び出してみる。ジュゼッペに何の用?」
私「●●●(サイトの名前)。彼とここで取引をする約束をしている」

しばらくすると、施設の奥から大柄な男性が現れた。ジュゼッペだ。「チャオ! さあ、こちらへどうぞ」。握手を交わし、彼は詰所のテーブルに袋の中身をおもむろに並べだした。バールで使われるノベルティ・エスプレッソ・カップ。イタリアでは日本と同じく、各地域ごとにコーヒー豆の問屋が幅を利かせており、取引先のバールには問屋のロゴがプリントされたカップやグラス、灰皿などが販促品として供給される。これらの古いものはコレクターズ・アイテムとして定着しており、そのプリントされた問屋のロゴは、優れたデザインも多く、庶民のイタリアン・デザインを観察するにはうってつけだ。


彼のTシャツのロゴを検索してみると、色々な意味で心配になったが、そこはイタリア。だいじょうぶ、マイ・フレンド。

カターニアにはTorrisiという問屋があり、その昔のロゴはとてもクラシカルで美しいデザインであったため、例のサイトでカップで見つけて、彼に直接取引をお願いしたのであった。彼は私が好みそうな他のカップも見繕って持ってきてくれたので、いくつかを追加で購入する。しかも、値引きまでしてくれた。流石、シチリアの男たちは気前がよい。


ジュゼッペから買い取ったエスプレッソ・カップの一部。庶民のイタリアン・デザイン/フォントを定点観測するにはうってつけだ。耐久性を考慮してか、厚手に焼成されたものが多いので、バックパックに10カップ以上詰め込むと結構な重さになる。

ちなみに、なぜ待ち合わせ場所が警察署だったかというとジュゼッペ自身がカターニアの警察官でここの敷地内にある寮に住んでいるからだそうだ。詰所にいた他の警察官たちも楽しそうにカップを手にとり、カップについて何かしら論じあったりしている。

イタリアでは、職務中に許される隙間の時間が日本より多い気がする。朝一番にヴェローナのとあるリサイクルショップに行くと、いつも絵画コーナーを"パトロール"している警官がいるし、トレニタリア(イタリアのJR)の車掌が停車時に外へ出てタバコを一服するのもよく見る光景だ。この緩い雰囲気が、イタリアのちょっとした醍醐味であり、堅苦しい日本で生きる私には、少し羨ましかったりするのである。

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