HIERARCHY

Life is a journey #22

HIERARCHY

Contributed by Daijiro Inaba

Trip / 2023.12.30

メガバンク、人材系コンサルファーム、教育系ベンチャー、スポーツチーム、会計事務所で仕事をしてきた葉山在住のDaijiro37歳の「生きる」を考える旅。どこまでもオープンに、幸せなこともしんどいこともモヤモヤすることも恥ずかしいことも晒しながら、旅を綴ります。

#22


葉山に住んで4年が経った。まだまだ知らない葉山の魅力がたくさんあって、これからも飽きることがなさそうな日々を過ごしている。この町の住人になれて幸せに思う一方で、地域を愛しながら生きていくことの難しさも感じてきた。
地域愛ってやつは万人にとってピースフルなことだと思っていたけど、短絡的だった。
そんなモヤモヤした気持ちと2024年に向けた決意を綴って2023年を締めくくりたい。


中村キース・へリング美術館のエントランス


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1.HAYAMA
2.ヒエラルキー
3.愛おしい不便さ
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1.HAYAMA
人口3万人ちょい、17㎢の町、葉山。公共交通手段はバスと車のみで、電車は通っていない。
なんで葉山に住んでいるの? とよく聞かれるけど、一度葉山に来たらその理由はすぐわかるはず。都心との距離はそれなりにあるけど、この町にはいろんな豊かさがある。むしろ、豊かすぎるくらい。4年いてもまだまだ葉山の魅力は味わい尽くせていない。


朝焼け、に包まれた富士 優雅に鳥が飛んでいる



愛犬つきみとの朝散歩


この町で朝起きて、愛犬を連れて歩いているだけで幸福感に包まれる。
葉山の人たちは、本当に葉山を愛しているなと感じる。みんなで大切なものを共有している感覚がある。僕もこの町が本当に好きだし、この町と出会えたおかげで人生が豊かになったと心から思っている。


アジサイ公園から見下ろす葉山 愛犬つきみと



2.ヒエラルキー
こんな大好きな町でも、衝突は起こる。最近は特に大型建設の反対運動が盛んだ。
住宅もたくさん建つし、大型施設の建設もいくつか始まっている。今まで見晴らしの良い場所だったところに家が建つとなんだか寂しい気持ちになるし、大型施設の建設にはもちろん反対運動が起きる。


住民の怒りが爆発している例



最近たったノボリ 誰が、何から何を取り戻すのか


でもそれだけこの町を愛しているってことだと思うし、気持ちはよく理解できる。
僕自身、自宅の裏の空き家が立て壊されてアパートに変わると聞いたときに、窓からの眺望を奪われて、怒り、暴れた。
尊敬している先輩や友人にもあたりちらした。


ある地域の住宅工事 広い空がなくなっていくのが寂しく感じた


朝の散歩中に山から朝日が上がってきて、浜辺に差し込んでくるのが好きだが、海沿いに建物が建つとその光もさえぎられてしまう。
でもその大型物件は、きっと葉山のことが大好きな人が取り組んでいるアクションだ。他の人にはできないことを、人生をかけて取り組んでいるんじゃないかとも思う。
出来上がってみたら、豊かさが増すものなのかもしれない。
地域愛ってやつは、すごく自由で、ひとりひとりの中にあるもので、時にエゴとエゴのシーソーゲームになっちゃうんだな。


海沿いの大型建設①



海沿いの大型建設②


ある日、葉山のクリーニング屋の店主と話していて、昭和の葉山の話を聞かせてもらったことがある。もっと空が広かった、海辺も静かだった、海ももっときれいだった、という話だった。
失われた風景がたくさんあるんだな。その頃の葉山に行ってみたいな。
過去の葉山に思いを寄せていてハッとしたのがひとつある。僕も、4年前に移住してきて葉山の景観を奪った一人だということ。
僕は家が出来上がっていくことに終始ワクワクしていたけど、そんな気持ちとは裏腹に、大好きな風景を失ってしまってがっかりした人もいただろう。
数十年前、人口が1万人もいない頃の葉山はどんなところだったのだろうか。
きっと空は広いし、交通量も少なくて、海も今よりさらにきれいだったんだろう。
でも、コンビニもスーパーもなくて、カフェもパン屋もワイン屋もないころの葉山を見たら、その時が一番だと思うのだろうか。
その答えはきっと、町民ひとりひとりの中にしかない。


森戸神社からの風景


望むものはひとりひとり違うし、何事も表裏一体で、「自然豊かな葉山を守ろう」と言っている人が葉山町の財政を苦しめる主要因になってしまうことだってあるかもしれない。
すごく自由で、豊かさがあふれているこの葉山でも、それを守り続けることは難しい。
自分が大切にしたいものに悪影響が及ぶと、大切にしたい気持ちが強い分、怒り、暴れる。
怒りや暴力に依拠したヒエラルキーが出来上がってしまわないことを心から願う。


青の晩餐@逗子アートフェスティバル Photo by TakuyaTOKYO



3.愛おしい不便さ
葉山町で生きていくと決めて丸4年がたった。
「急行が止まる主要駅から徒歩5分以内」の生活しかしたことなかったけど、現在は東京駅から1時間、徒歩30分程度の所に住んでいる。
当時はこの不便さにビビっていたけど、今ではこの不便さが何より愛おしい。
移住した当初よりも人は増えたし、店も増えたし、バスも混んでるし、終電で帰ってくるとタクシーは大行列だし、この町も少しずつ変わってきている。


すやぁ


葉山の人たちとの交流も増えてきた。多くの人があえてこの不便さを選んでいて、便利なこと以上に大切にしたいものを持っている。
いつも大切なことに気づかせてくれる葉山の町のみんなにも、感動を与えてもらいすぎているこの町にも、恩返しをしていかないとな。


上皇ご夫妻が愛した奥葉山の棚田


2024年は町のシンボルを守る仕事をする。
葉山らしい豊かさのあるサウナを作って、町のみんなや葉山を愛する人々の憩いの場も作る。(※物件探し中!)


愛犬と決意表明


葉山を大切に思う気持ちは誰もが持っているからこそ、その気持ちを最大限尊重したいと思うけど、自分自身が当事者としてできることを全うしたい。周囲のことばかり気にして行動に移せない自分にはなりたくない。

2023年もありがとう葉山。
葉山5年目は、町に恩返しする1年にしていく!
行動あるのみ。2024年もよき1年になりますように!


Life is a journey!



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