南でのプライスレスな時間

Mamma mia! #122

南でのプライスレスな時間

Contributed by Aco Hirai

Trip / 2022.08.23

イタリアに活動の拠点を移し、フリーのエディター・ライターとして活躍するAco Hiraiさんの生活をパーソナルな視点で綴った連載「Mamma mia!」。移動続きだった2週間が終わり、あとは飛行機に乗ってナポリまで。そこからは電車が目的地まで運んでくれる。やっとやってきた私のプライスレスな南時間。

#122

毎年恒例の南の海の近くへ。ナポリまでは飛行機で。



ここ最近、移動続きだったこともあるんだけど、心の中も色々な感情が詰め込まれてフルになっていた。
だから、「南へ行ったらゆっくりしたい」
それが私のささやかな楽しみだった。
そう、できるだけ何も考えずに、ただゆっくりと。

空の上から見るナポリってカラフルで好き。



そんな南での時間がやっと訪れたのは8月の半ば。

朝は、窓から差し込む太陽の日差しが目覚まし代わりで、

目覚めのエスプレッソを入れたら、朝食を調達しに海辺のバールまで。

ちょっと強い太陽の日差しも、この瞬間だけは嬉しかったりする。

バールでは海を見ながらクロワッサンを頬張る、2杯目のエスプレッソはミルクを追加してマキアートに。

今年の海は一段と穏やかで透明度も高い気がする。



海はとことん穏やかなのに、そこからはいろんな音が聞こえてくる。

人の賑わう声や、車のクラクション、風の音に、波のささやき。

それから、南の匂いに、海の匂いに、夏の匂い、なんだかすごく満たされている私がいる。

ブルーからピンクのグラデーションが美しい空は、ここでは特別ではなく日常だったりする。



昼間は、近くのワイナリーへオーガニックワインの買い出しに出かけ、大好きな赤ワインを買い占める。

緑々しい山の背後に隠れながら海へと沈んでいく夕日と、ピンク色に染まった空を見送る頃には家に到着し、ゆっくり夕食の準備をする。

特別なことは何もなく、

ただ野菜は最高にフレッシュで、ローカルフードのモッツァレラはミルクたっぷり、

食後のフルーツは、庭で採れたイチヂクだったりする。

そして、昼間にワイナリーで買ったよく熟された赤ワインを夜な夜な楽しむ。

そこには、久々に会う大好きな友人、LUIGIの存在も欠かせない。

緑に囲まれたワイナリー、そこで出会ったわんこのジャック。



ゆっくりと味わう南での時間は私にとっては最高なひととき。

南へ来ると日常が特別な時間に変わから。

忙しい日々を過ごしていると大事なことを忘れがちになる。

だからここに来ると、自然や食べ物、動物、色んなものに感謝することを思い出せる気がする。

夕日が眩しかった家までの帰り道。



空が青いこと、

山が緑なこと、

海が澄んでいること、

太陽が眩しいこと、

空気が美味しいこと、

そして、自分の心が満たされていること。


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