Couch Surfing Club -西海岸ロードトリップ編- #53
Tax heaven
Contributed by Yui Horiuchi
Trip / 2023.08.03
#53
コーバリスでの数日間の滞在も充実しきっていて、今回の渡米では個人的にPDXより居心地のいい街に、名残り惜しくお別れを告げる時がきた。
良い滞在であればあるほど後ろ髪を引かれるような気持ちになる。
パッキング直前、オレゴン滞在期間に着ていた服とお世話になった友人の実家に敬意を表して、シーツやピローケース、洗えるものを洗ってから出発したかった。
脱水を終えて乾燥機に入れるというローテーションをしている間に最後の収穫を楽しませてもらうことにした。
こちらにいると気軽に買えるラズベリーも初めて実がなっている状態でお目にかかる。
収穫はそっと手を添えるだけでホロリと可食部だけが手の中に転がり落ちてくるので、せっかく取った実が潰れないように優しく包み込みorその場でパクパクと頂いてしまった。
最終日ということもあり、収穫を楽しみながら庭の散策を楽しんでいると、今まで気づかなかったことがもう一つあった。
なんと友人の幼少期そっくりの木彫りの男の子がデッキチェアの間で佇んでいる。
まさかとは思ったけど、確認したらやはり本人が幼少期に近所の美術の先生のモデルをやったという話だった。
写真でしか知らない友人の少年時代、そこにいるかのような納得の出来である。
最初のバイトでさぼっていた時のエピソードも思い出され、当時もこんな感じで庭で油を売ってたんだろうかと想像も容易かった。笑
夏の終わり太陽がたくさん降り注いで、滞在のタイミングでこんなにたくさんのお野菜を収穫出来、しかもカリフォルニアに持って帰っていいよというボーナス付き。
好きでいられない訳がない。
そろそろ乾燥機も回り終えたとこだろう。
たくさんの収穫物を抱えて部屋に戻った。
庭で収穫大会を満喫している間、しばらく友人の姿が見えなくて名前も呼んでも返事がなかった。
また朝ご飯でも買いに行ったんだろうと思っていたが、部屋に行ってみて理由が分かった。
空いた時間で洗濯物を畳んでくれていたようだ。
綺麗にカテゴライズされた状態でベッドの上に整列された洗濯物を見て不意に感動してしまった。
自分がゲストなので気がついてやってあげることはよくあったが、こちらのしたことをしてくれると純粋に嬉しいもので、いち早くありがとうと伝えたいのに家中を探し回っても見つからず、それもそのはず、ずっと駐車場の中でゴソゴソと探し物をしていた。
「洗濯物畳んでおいてくれてありがとう、出発までの時間なかったからすごく助かった」
「ああ、うん」
なんだか照れ臭くされるとこちらまで照れ臭くなってしまうじゃないか。
「今朝庭にある犬のうんち回収してきたんだけど、また新たにどっかでしてなかった?」
「あ!りんごの木の下にでっかいのあったよ!」
「まじ!やっべ!取って帰んないと親に叱られる!」
どこの親子も似たようなものだ。
パッキングを終えたボストンバックを玄関前に用意して、部屋に戻ってベッドメイクをした。
立つ鳥跡を濁さず。
来たときの状態に戻すために部屋の写真を撮っておいたので、現状復帰を心がける。
玄関に戻り車へ荷物を積み込み始めると、途中で友人が思い出したように一言。
「あ、そういえばこのドアについてるインターホン、人感センサーで僕たちが出入りする度に画像がお父さんのスマホに送られてるんだった」
わたし内心(まじかよ)
「多分ちゃんと服は着てたよね」
路上で踊り狂ったり、変なことは確かしていない……はず。
余計なことを言うので突然挙動が不振になってしまった。笑
なるべくカメラの死角で移動する。
最後にキッチンを綺麗に片付けて、使い切ってしまったピンクソルトをお土産にペッパーミルの横に置いておく。
会ってないけど、友人の父、母、本当に素敵なお家に滞在させていただきありがとうございました。と、心の中で唱え、家を後にしガレージから車に乗り込んだ。
楽しい滞在だと瞬く間に時間がすぎてしまうが、今回のオレゴン訪問もまさにそれだった。
運転席でシートベルトを締めながらこちらを向く友人。
「Ready?」
「Ready!!!」
「Trader Joe’s?」
「Trader Joe’s!!」
前のめりな感じで私のオレゴン州での最後のタスクが待ち受けていた。
消費税のかからない州ならではの最重要課題『お買い物』である。
特に大好きなTrader Joe’sにはマストで立ち寄ってもらいたいと前々からリクエストしていたので、友人も覚えていてくれたようだ。
「自分の母親も地元にTrader Joe’sができてからすごい興奮してて、何がそんなにいいのかよく理解できてなかったんだけど、一度行ってみたらなんでもいい品質でとにかく安くてびっくりしたよ」
そう、友人の言う通りそのままである。
そして、オリジナルの商品いわゆるPB商品はバラエティに富んでいて、他の食料品店では手に入らないような調味料やグラノーラ、お菓子の数々、クオリティはそのままにTrader Joe’s “限定”と言うマーケティングにちゃっかりハマってしまうのだ。
駐車場で空きを探すのも待たず入り口で先におろしてもらい、カゴでは足りないと最初から目論見カートをピックし入店。
いざ、(気持ちは)戦闘開始!!
入店直後から目移りしてしまい、あれもこれも欲しい、食べたい、かわいい、安い! と、一人で忙しかった。
目当てのコーントルティーヤは5袋、賞味期限は日本に帰るまでギリギリ持つので帰国してすぐに冷凍庫に入れる算段で行こう。
脳内シュミレーションでこれは残りの滞在で食べて、これは友達へのお土産にしよう、とカートの上のカゴにいろいろと振り分けをしながらチョイスしていった。
これまではホテル滞在で近所のTrader Joe’sで調理のいらない開けてすぐに食べれるお菓子やサラダのような簡単なものなどしか実食できたことがなかったので、ここぞとばかりに初めての冷凍食品や帰国に際して持ち込み制限のあるチーズ、肉製品などに積極的に選んでいく。
フルーツも日本じゃこの値段で買えないな。
日本の果物の味や見た目のクオリティは目をみはるものがあるけど、ブランド化フルーツの開発とともにお値段がどんどん可愛く無くなってきてしまっているように感じる。
朝ご飯コーナーでシリアルなどを味違いでカートに入れ、オレオ味やピーナッツバター味のグラノーラがあるだけでもう楽しすぎて住みたい。
店内を半周したところでカートが満杯に!
そろそろ車から降りて来るであろう友人に、
『入店する時にカート一台持ってきてください』
とテキストした。
レジ前のキャンディコーナーで大好きな一袋99¢のコーヒービーンズのチョコレートを棚に出てるだけ大人買いして二台目を満杯にしたのも束の間、自前のエコバッグ4つをぱんぱんにして店を後にした。
いざ、コーバリスも出発!
という車内で
「ちょっと寄り道していい?」
「もちろん!運転手の仰せのままに!」
友人が車を停めたのは、お袋の味ならぬ郷愁の名物、そうAmerican Dream Pizza!
ここのピザで育ったような友人は別れを惜しむかのように持ち帰りのピザを買って戻ってきた。笑
熱々のピザボックスを助手席に手渡されて出来立てのピザを食べないなんて拷問だ!
ということで真っ先に手をつけたのはわたしの方。笑
帰国まで1週間を切ってることに突然気がついてしまって一瞬にして現実に引き戻されてしまった今朝。
でもこのロードトリップの復路の冒険は始まったばかり。
帰り道にまだ見ぬ景色が待っているんだろうと胸を躍らせながらわたしは右手に持ったハワイアンピザにがぶりとかぶりついた。
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Yui Horiuchi
東京を拠点に活動するアーティスト。幼少期をワシントンD.C.で過ごし、現在は雑誌のイラストや大型作品まで幅広く手掛ける。2015年に発表した「FROM BEHIND」は代表作。自然の中にある女性の後ろ姿を水彩画で描いた。自然に存在する美や豊かな色彩を主題にする彼女の作品は海外でも評価されている。