my milli mile #1
YELLOW HELLO
-新しい世界に、はじめましてのご挨拶-
Contributed by Yuka Ishiyama
Trip / 2024.03.28
大学生のYuka Ishiyamaさんがフィンランド留学中のあらゆる瞬間を独自の視点で切り取り、出会いのストーリーとして全8回でお届け。
#1
真新しく黄色い世界に出会う度に、私は挨拶をする。その光を奇跡と照らし合わせてみる。
そんな瞬間に出逢うことが、私の小さく、けれど大きな幸せだ。
黄色かった。
電車に揺られてスイスの国境をすすむ。
真夏の日差しは、体力を奪うどころか私のアドレナリンを掻き立てた。
旅の感覚は、今になっても表現に困る。
ただ、旅人にしかわからないと言ってしまえば簡単だけれど、なぜだかそれだけで終わらせたくないのだ。
自分の足でその土地にいき、自分の目でその景色を見ないと感じることのできないあの心のざわめきは、特別だ。
とはいえ、誰もが旅の途中にいる。
それぞれが見る景色が、それぞれの日々を彩り続けている。
そして、どこかであなたの見る景色が誰かの日々に色を重ねるかもしれない。
あの日、あの場所で出逢ったあの人は、元気にしているだろうか。
あなたを見た目だけじゃ判断できないけれど、
そのストーリーを聞いたなら、
私はあなたをほんの少し、近くに感じるだろう。
異なる色や形、真新しい景色で溢れた世界だけれど、そのストーリーを聞いたなら、
私はこの広く大きな世界にほんの少し、近づけるだろう。
色褪せたって美しいことを、その重なりがあなたに教えてくれる。
個人と世界で繋がる、過去と今の出会いの物語を綴ります。
日本→イスタンブール→ヘルシンキ
-2022年1月11日-
成人式を終えた日の翌朝。
思う存分に遊びきった顔で帰宅した私を出迎えたのは、ふかふかのベッドと安心するいつもの空間。
ではなく、荒れ果てたベッドとその上に置かれたあれこれ。足場を陣取る二つの大きなスーツケースとハンドバック、そしてぱんぱんに詰まったバックパック、その他もろもろ。
そうだ。私は今日、23時間かけて遠くの北の国、フィンランドへ飛ぶのだった。
なんとか強行突破したあの1ヶ月は、
なんとも味わい深く、忘れがたく、
今ここに立つ私にも、自分の人生に必要とされている声を届けてくれる気がする。
特に出発前の数日間は色々なことがありすぎて、ここではどうも書ききれそうにない。
簡潔に言うと、
空港で泣いたり、飛行機で泣いたり、最後の晩餐は味がしなかったり。
悔しかったり寂しかったり嬉しかったり楽しかったり、まさに感情のジェットコースターだ。
それでも、私はなんとか日本を出た。
だけど……
無事に留学先についたのも束の間、アパートの鍵を受け取れないという事件が。3万円分ものホステルは結局キャンセルすることになり、大雪の中空港からタクシーすら呼べず、一緒に乗せて貰うために、3時間も到着者を待った。
(それはなんとも緊張感の漂う3時間。あの時、余裕などゼロの私がほぼ無理やり食べたスーパーのサラダラップは、その後1年間で数えきれないほど私の心と胃を満たしてくれた)
大学のオリエンテーションウィークは、ほぼ潰れかけのカスカス声で、初めての自己紹介もまともに出来ずに始まった。
楽しみにしていたパーティにも参加できず、その夜は悔しさで買いたての布団にうずくまった。
そんな買いたての布団さえも、到着して間もない日に、 3時間もかけて知らない雪道を彷徨い、凍えながらようやく手に入れた布団だった。
私が1年間を過ごすことになる、フィンランドのポルボーという小さな街。最初のオリエンテーションの様子。
そんなこんながあって波乱の留学生活をスタートさせた私だが、今思うと、他人や周りに多くを支えられながら自分なりに踏ん張って毎日を乗り越えてきた。
今の自分があるのも、こうしてあの時のストーリーを誰かに届ける事ができるのも、それらの経験が全て自分の一部として今ここに残っているからだ。そして、それらが自分に与えてくれた自信が、どんな時も私の背中を押してくれている。
ほっこりとあたたかかったり、なんだかほろ苦かったり。
北の国では、
夜の10時なのに太陽がまだそこにいたり、
お昼だっていうのに目覚めた頃には外が真っ暗だったり。
私が過ごしたヨーロッパでの364日で、
180°の変化や景色に何度出逢っただろうか。
今でも、その時の心の揺れが私の軸を、私の立つ位置を教えてくれているような気がしている。
“my milli mile”
マイ ミリ マイル
私がミリ単位、マイル単位で繋がる世界の姿。
どうかその旅の途中で、あなたの物語にも巡り会えますように。
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Yuka Ishiyama
東京生まれ育ち、ひとり時間もパーティもコーヒーもビールも大好きな欲張り大学生。ヨーロッパ留学と旅を経て世界の広さと同時にその近さを実感し、誰もが持つ個々のストーリーをエンパワーし、表現したいと活動している。現在は日本のホステルで働きながら、世界と自分との出会いの旅を続けている。