
To Me, Somewhere in the World #52
海と共に生きる場所で – 奥尻島
Contributed by Yoko
Trip / 2022.11.09
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。
#52
今回も長旅だ。
長野に来てから、旅程が余裕で2〜3週間を越えてしまう。長野は各地へのアクセスが悪く、一度家に帰る方がお金がかかってしまうため、旅程を連続させることが増えたからだ。関東を出てから旅の「回数」自体はぐっと減ったが、家を不在にする期間はより長くなった気がする。
つまり「今どこ?」と友人に聞かれることが増えたのだが、大体、日本にいます。
今のところは。

奥尻空港へのランディング前。
さて、今回の旅の前半は北海道。札幌を経由して釧路・阿寒などのいつもの道東へ。2年弱で11回も通ってしまった大好きな宿の閉館予定を惜しみつつ、きっとまた会える、という思いで街と別れた。その後、札幌に戻り、直行便が出ている曜日に合わせて1年ぶりの奥尻島へ。
新しい場所に行くのは好きだが、コロナ以降は同じ場所に何度も出かけることも増えた。今回訪れた奥尻島の『ゲストハウス・imacoco』は2020年、2021年と毎年1回訪れていて、今回で3回目。札幌で買い込んだ食材(卵含む)を保安検査するという無駄なドキドキを楽しみながら、短い空の旅へ。

札幌の丘珠空港から奥尻空港への直行便がある。

奥尻島は有人離島19番目の大きさだが、北海道の消滅可能性都市ワースト1位。
奥尻空港に着いてバスを待っていたら、たちまち一人ぼっちになって笑った。でも乗り込んだバスのおじさんが優しくて、着いたら笑顔で待っていてくれた人がいて。1年ぶりだけれど、すっかり「帰ってきた」という気持ちに。

リビングから見える海。夏はSUPができるほど綺麗。

宿と温泉が同じ画角に写る。神威脇エリア。
今回は総じて天気がよかった。雨がぱらつく時間もあったけれど、滞在に影響しない程度。というよりも、外の天気がそれほど気にならないくらいには、ほとんど観光をせず宿でのんびり過ごしていた。いつも暖かく迎えてくれる家族や、そのまた家族のような存在の住人たちと一緒に。
朝ごはんを食べ、パワーあふれる子どもたちと遊び、海を眺め、夕方になったら歩いて一緒に温泉まで行き、夜は釣り上手・料理上手のパパママ……と言いたくなるくらい優しくて暖かい人たちと、一緒にご飯を食べた。それも、信じられない量の魚を(笑)。時を同じくして泊まっていた他のゲストも一緒に。

アジ。

アジフライ!

ソイ。
晩酌しながらこちらも適当な料理を作ったり、美味しいと言ってもらったり、作ってもらった料理を美味しいと喜んだり。表情しか見えないくらいの距離で過ごす時間は、何にも変えがたい時間だ。
彼らはこの場所を好んで来た移住者で、私もまた別の土地では移住者である。同じような境遇で、立場は違えど同じ場所を好んでいて、今一緒に時間を過ごせているという偶然にしみじみする。ご飯を食べながら、何度「そうだよね」と言ったかわからないくらい、たくさんの言葉を交わし、重ねた。偶然も、見方を変えれば必然になると思うのだが、少なくとも今の自分には必要な時間だった。だから今、ここに来たような気がする。

サバの味噌煮(リクエストした……笑)。
最近の旅は、本当に「誰かに作ってもらったご飯」を食べてばかりだ。料理上手のパパママが全国にいてありがたい……(笑)。食べたいと言ったら(忙しいのに)仕込んでくれて、来ると知って(朝早いのに)魚を釣って待っていてくれて、素泊まり(だから気にしなくて良い)なのに「ご飯食べてる?」と心配してくれる。さりげない会話や行動、おそらく彼らにとっての日常が、とんでもなく心地良いしありがたい。

夕陽。
「なんにもない」と形容されることもある奥尻島。そのなかでもさらに秘境とされる、「神威脇(かむいわき)」。そこには、大自然の素晴らしさだけではない、人のあたたかさとの出会いがある。宿の名前は、「imacoco(=今、ここ)」。
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Yoko
長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。









































































































































