帰ろう

This Time Tomorrow #27

帰ろう

Raos / Seapandon

Contributed by Natsumi Chiba

Trip / 2019.09.24

東南アジアでの旅を記録した千葉夏海さんの旅連載「This Time Tomorrow」。第27回は、ラオス/シーパンドン編です。旅先でのリアルな様子をお届けします。今回が最終回です!


シーパンドンとはラオス南部に流れるメコン川に浮かぶ4千の島々のこと。英語では4000 Islandsという。東南アジア最大の滝があったり、川イルカを見にカヤックにいったり、リバーアクティビティのツアーがたくさんある。その中でも大きな島ドンコーンとドンデット(ドンは島の意味)にゲストハウスやレストラン、バーなどが並び多くの観光客、バックパッカーが訪れる。

夜6時にピックアップがきて、タクシー、トゥクトゥク、バスや船を乗り継ぎようやく次の日の昼12時にドンデットに着いた。待ち時間も長くてかなりハードな道のりだったけど、それがまた”旅してる感”むんむんでとても楽しかった。

この移動でひとつハイライトになるのが、夜行バスが今までとは一味違ってリクライニングする椅子に座るのではなく、マットレスに寝っ転がるスタイルだったこと。もしあなたが一人で旅しているなら、必然的に全く知らない人と隣同士に寝ることになる。



世界193カ国まわったアメリカ人の旅人のインタビュー記事を前に読んで、彼はこう言っていた。”In order to be a real traveler, you have to be comfortable being uncomfortable." 「真の旅人になるためには、居心地の悪さも心地よくならなくてはならない」
全くもってその通りだと思う。彼の言葉を思い出したそんなバス移動だった。

ボートでドンデッドに到着して島に降りた途端、自分のなかの時計が止まったような気分になった。今まで訪れたどんな場所よりもびっくりするほど時計の針が進むスピードが遅くて、もういっそのことスイッチをオフにしてしまおうと思うくらい。





こんな場所は他にどこにあるんだろう?なかなかここまでオフにさせられるところはないと思う。ラオスに来たときは是非訪れてこの雰囲気を肌で感じてほしい。



この島ではサンライズを浴びて朝を始め、サンセットを眺めて夜を迎える。余分な電気のないこの島は、私達は太陽と月と一緒に生きてることを改めて思い出させてくれる。こんな場所で悩みごとを思い出したりするのは勿体ない。抗うことをやめて時間を止めちゃおう。それがこの島でのベストな過ごし方。

私が泊まっていたゲストハウスは家族経営で、友達や彼氏彼女では生まれないような家族特有の安らかさやあたたかさに包まれていた場所だった。

帰りのバスに乗るためのボートに乗る時、ママ(私がそう勝手に呼んでいた)が私の手首に「グッドラックフォーユー」といってミサンガを巻いてくれた。今までで一番の見送りだった。旅の終わりはいつだって寂しいものだけど、この家族のおかげで寂しさが和らいだ気がした。







帰る場所があるから旅に出てこれるんだなと今回の旅にでて改めて思う。
心配してくれる家族やお土産話しを楽しみにしてくれている友達がいるから、私は遠く一人でも旅に出てこれる。旅は一人だけのものではなくて、実は見えないところで色んな人を巻き込んでることを思うと、周りのひとたちに感謝しかない。

旅してるときは涙もろくなったり、やけに寂しくなったり、イラッとすることもあるけれど、思い返すとその一瞬一瞬すべてが大事で愛おしくて、私は自分の旅が大好きだって思う。私の旅は私にしかできないし、あなたの旅はあなたにしかできない。

次はどこで自分の旅を愛するだろう。まだ分からないけれど、きっと素敵な場所に違いない。
今は手首に巻いたミサンガが私を家へ引っ張る。
さぁ、帰ろう!


BGM : A Change Is Gonna Come / Sam Cooke


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