To Me, Somewhere in the World #62
目的のない目的地くらいが丁度良い
Contributed by Yoko
Trip / 2023.01.18
未知なモノすべて知らないことを知りたい、欲望に忠実に生きるフリーランスのWebライター・編集者Yokoさん。日本国内の旅の話をリアルタイムで、時に振り返りながらつづる旅連載。
#62
長崎旅の最後は長崎市内を離れ、西海市(さいかいし)という少し離れた町へ。バスを乗り継いで1時間半、途中から海沿いなのはわかっていたけれど、想像以上にアップダウンが激しい道を進むことに。海岸線の高さ以外は奥尻島にも似た景色。すでに訪れた土地と重ねながら、行くかどうか悩んだくらいの新しい場所に向かった。何があるかわからない、何もなくても良いけれど、なさすぎても困ってしまう、そんな場所での3日間へ。
雪の浦。
たどり着いた「雪の浦」。まずはバス停すぐ側のスーパーにご挨拶と思って入ると、島の共同売店のような小規模さで少し驚いた。ここは大陸だから。でも欲しいものはそろっているので便利。
スーパーを出て、荷物を持ったまま少し街を歩く。来る時に見ていた、思わず立ち止まりたくなるような景色の延長線、丁度良い「何にもなさ」。何だかとてつもなく嬉しくて、理性がなかったら叫び出したくなるくらいの景色だった。見るもの全てが。
雪浦ゲストハウス森田屋。
橋を渡り、目的の宿へ。見えてきた日本家屋は自分の好みのど真ん中。奥にそびえる緑、建物手前のカフェスペース、建物側から見れば目の前は河口。周りに家はあれども高い建物はなく、人通りもあるけれどまばら。想像以上の「好き」と「良い」に溢れていて、久しぶりにとてつもなくわくわくした。
雪浦海浜公園。
近くのビーチにも立ち寄る。墓地を抜けた先にあるビーチは、想像以上に美しかった。立地には少しびっくりしたけれど。ともかく夕日が輝いていた。
日差しが差し込んで明るい。
宿主さんとお会いし、部屋を案内してもらう。連休にかかっていた日だったけれど、たまたま今回はずっと一人とのこと。それでも、着いた途端に大きなスーパーに連れて行ってもらったり、スーパーまでの道中に見えた景色がまた綺麗だったり、話したことだったり、そういう全てが温かくてありがたかった。
畳の奥に、大きなオーディオ機器も。
広いリビングで畳に寝転び、壁一面を使ってプロジェクターでテレビを見て、カウンターでパソコン作業をして。一人の時間も多くあったけれど、町の人がいらしたり、宿主さんがいらしたり、オープンなリビングに差し込む光が暖かったりして、丁度良い心地よさの時間が流れた。
目の前は河口。
異国の文化も大好きだけれど、どこか懐かしい、でも今日々接しているわけではない安心感や空気が、少し年季の入った日本家屋にはある気がする。そして、あたたかい距離感の人たちと出会えるところにも。だからここも好きだし、福井の玉村屋も好きだし、奥尻島のimacocoも好き。もうなくなってしまったけれど、かつて阿寒にあったゲストハウスコケコッコーも。全く日本家屋ではないけれど、釧路のプルーフポイントも居心地がよくて大好き。
海のそば。
自分の好き、を再確認できたのは、目的を持たずに訪れた土地。余計というか余白というか、ほんの少しのゆとりを持つことで、次は目的地になる素敵な場所に出会えた。
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Yoko
長野在住、北海道出身。世界一周予定が新型コロナウイルスの影響で中止に。東京から葉山、長野へと拠点を移しつつ、国内外を自由に旅している。レバンガ北海道(#11)とアイスが好き。フリーランスのWebライター・編集者。