ないものねだり

Greenfields I'm in love #68

ないものねだり

Contributed by Aya Ueno

Trip / 2022.09.30

兵庫県神戸出身、東京在住のWriter/Photographer。学生時代に渡ったイギリス留学を機に、人や、取り巻く空間を魅せる表現に興味を持ち、現在Containerをはじめ、カルチャー、フードメディアにて発信中。

#68

先月からあちこちへ旅していたら、撮り終わったフィルムが気づけば5本も溜まった。カバンの中や部屋のあちこちからかき集め、学校の帰り道、まとめて現像へ持って行った。(そういえば、4本現像したら1本無料だった!)

データが届くと、1つ1つあけるたび、こんなのも撮ったのだった! と思い出せて楽しい。この時のフィルムは気に入った一コマが多くて、とても嬉しかった。ただ所々、その光景に見覚えはあるものの撮った覚えのない写真があったり、それどころか本当に見覚えのない風景の写真があったりする。少し考えて、まりかに送ってみたら、予想通りこれは彼女のフィルムだった。旅行中、一緒にいる間に混ざってしまっていたようだ。
わたしは大抵写真撮る時、自分と人、ものとの距離感をそのままで撮ることが多いのに対し、彼女の写真は一歩離れて撮った景色が多い。クローズアップしてみたらガヤガヤと一度にいろんなことが行われている場所も、彼女の一歩後ろから撮る写真だと一帯が止まっていて、なんだか静かで素敵だ。私は120〜130枚という写真の中から、まりかが撮影したであろう写真たちを見つけ出し、彼女に送ってあげた。

フラワーマーケットでのお気に入りの写真。



V&Aで撮った、知らない女性たち。



これも、知らない人。



リリーは香り好きだ。わたしと一緒。



この家で過ごせる時間も、あと2週間ほど。子供たちは、以前より増して私の部屋に遊びにきて一緒に過ごすようになり、私は嬉しさと寂しさが早くも交差する。ありったけの愛情で、彼らと一緒にたくさん遊んだ。
ある日、リリーはお風呂に入った後、びしょびしょの頭で部屋にやってきた。(そう言えば、この家の人はほぼ毎日湯船に浸かる。湯船に浸かってゆっくりできるのは、日本人の私にとってはとっても嬉しい習慣だった!)子供たちは基本的に自然乾燥だが、今日はリリーの髪をドライヤーで乾かしてあげることにした。彼らの髪は乾くと、ブロンドのカーリーヘアになる。その髪質は、羊みたいにふわふわでとってもかわいいのだけど、リリーはストレートヘアに憧れているらしい。髪を乾かした後、翌日に学校のクリスマスパーティを控えていた彼女は、真っ直ぐにしてほしいと私のストレートアイロンを指差してとお願いしてきた。絶対そのままの方がいいと思ったものの、癖っ毛のわたしも彼女の気持ちがわかる。

わたしがリリーの髪を乾かしている間、彼女もiPadで美容師さんをしている。



ストレートにすると、少し大人っぽい。


ストレートヘアーになったリリーは何度も鏡を見て、嬉しそうにポーズを取ったり、家族に見せ歩いたりしていた。リリーのカーリーヘアーが好きなカトリン(母)は、嫌そうにしかめっ面をしていた。


翌日、子供たちの小学校で開かれるクリスマス会へ私もついていった。校内のあちこちで1ポンド2ポンドで出来るミニゲームやワークショップが行われ、無くなってしまうわけでもないのに、子供たちはまるで何かに急かされているようにあっちに行ったりこっちに行ったりと落ち着きなく走り回っていた。

バケツの中から宝を見つけるゲーム。


程なくして、親に分け与えられていたお金が無くなったリリーは、上目遣いを使って1ポンドをせがんできた。髪の毛にきらきらのスプレーをかけたいらしい。もちろんわたしはリリーに負けて、1ポンドを渡した(笑)。彼女の髪は、ティンカーベルのようにキラキラになり、満足げな顔をして、またどこかへ消えていった。

このクリスマス会の醍醐味は、ホールで行われる子供たちの合唱だ。決まった場所に、綺麗に整列して歌う日本の音楽会とはまるで違う。ステージの上でさえあれば、立ったり座ったりしてOK。みんな自分の場所を見つけると、楽譜を手に、自由なスタイルで歌い始める。
中高時代、毎年この季節に謳っていた懐かしいキャロル。子供の歌声はあどけなくて、ピュアで心をくすぐられた。

アグリーセーター姿の子供たちが可愛い。



帰国前にやることリストの項目は、まだまだ埋まっていない。学校から近いから、いつでも行けるとなかなか行けていなかったThe Photograpphers' Galleryもその一つ。ある日、仲良しの韓国人の友達、きょーちゃんと行ってきた。彼女は日本語が堪能なので、いつも日本語で会話する。

The Photograpphers' Galleryには、敷地こそ少し小さいが階数が多く、そこには一ひねりしたようなかわいらしい作品が数多く展示され、とても楽しかった。また、ショップには大量のポストカードや、見たこともないような特殊なフィルムが何十種類も並んでいて、一人でも何時間だって過ごせそう。もっと前から行っておけば良かったと少し後悔したくらいだ。

ピカソのパン。



帰ってポストカードボックスを開けると、思い出の詰まったカードがたくさん。イタリアの夜ごはんを待っている時に立ち寄った雑貨屋さんで買ったもの、パリでまりかと訪れたギャラリーで見つけたもの、1つ1つの思い出にふけりながら見返した。

ベットに並べたら、とってもかわいかった。



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