California Roadtrip #2

-San Diego-

Photograph & Text:Ako Tsunematsu(MOUTH JOURNAL)

Trip / 2018.08.08

カリフォルニア・ロザンゼルスにある街トーランスから始まって、
サンディエゴ・シティ、パーム・スプリングス、コーチェラ・フェスティバル、
ダウンタウン、そしてアボット・キニーと、
人生で初めて自分で買ったカメラ片手にめぐった10日間。


Special thanks to VISIT CALIFORNIA(http://www.visitcalifornia.jp/



#2 San Diego

「ロングフライトだった?」
深夜のチェックインカウンターで、恰幅のよい女性がそんなに高くないトーンで、でも大きな荷物を抱える私に労いをかけるような暖かい目つきで聞いてくる。そうだね、わりと長かった。そう答えると、私の話を聞いているのか聞いていないのか、
「あ!空いているから良い方の部屋にしてあげる。こっちはエレベーターの音がうるさいからね」
と言ってオールドスタイルなPCをカチカチ操作する。その、エレベーターの騒音とやらがどれほどのものなのかは知る由もなかったけれど、得をしたのか、それともただ難を逃れた……?のかは正直わからない。アメリカにくると、味気ない言い方をするなら、こういう“余計な一言”がとにかく多いと思う。でもおかげで私は、それは勘弁!なんて、おどけてみせたりして。ぐっと距離が縮まる。そうして笑顔で差し出されたヤシの木が描かれたカードキーを、似たような笑顔で受け取った。

この<The Lafayette Hotel>は1946年から続く老舗のブティックホテル。映画『トップ・ガン』の撮影場所にも使われたそうで、オリンピックサイズの大きなプールがアイコニックだ。明日の朝食は、プールサイドで食べようっと。









翌日は早起きをしてノース・パークへ。ホテル からは歩いても行けるから、散歩がてらのんびり行こうかな。サンディエゴは、カリフォルニアの中でも治安が良いとして知られる街。避けたいエリアはあるけれど、ぷらぷら気ままに歩けるのが楽しい。そしてこうも天気がいいからなぁ。名物のウエスト・コーストIPAで景気付けに一杯やってしまってもいいかしら?

と言うのも、この街は150 以上もの構造所が密集するビールの聖地でもあり、特にノース・パークにある30thストリートは通称ビール大通りと呼ばれている。

最初に訪れたのは<Modern Times>。ニュースペーパーが一面に貼られた壁や、天井を覆い尽くす大量のランプシェード、そしてビデオテープで作られたバーカウンターなどが独特な雰囲気を醸している。コーヒーの焙煎もやっているらしく、ビールにするべきか、コーヒーにするべきか(やっぱりまだ朝だし)悩んでいたら、「これがいいんじゃない?」とお勧めされたのはコーヒー・スタウト。コーヒー豆を使ったビールか、なるほど。キリッと冷えていて、コーヒーとホップどちらの味も香りも豊かだ。これ、日本の喫茶店にもあればいいのに。







その後も何軒かブルワリーをはしごしつつ、ショッピングも楽しむ。近頃のノース・パークは、ぐっと小洒落た街になったそう。何よりも治安が良くなり、夜遅くまで開いてる店も増えた。若い人やアーティストが集まりだし、ギャラリーやセレクトショップが次々とオープンしているとか。

ふらっと入った<Whiskey Locker>もそのひとつ。壁の白さがまだ目立つ店内を、可愛いTシャツないかな、なんて物色していたら、ランチ中だったのかサンドイッチの包みをガサガサしていた店員の女の子が「旅行中?」と尋ねてきた。日本から来たんだよ、と伝えたら「どこ!?」と目を輝かせる。来月日本に行くらしい。デニムが大好きで東京と京都を巡ると言っていたから、知っている限りの東京のデニムショップを教えてあげる。嬉しそうにメモを取りつつ、なにやらドライハーブに火をつけ出す。その煙をプラスチックカップにモクモクと入れ、ウィスキーを注ぎ入れ、オレンジピールを擦り、手渡してくれた。
「これね、うちで作ってるウイスキーなの!今週末のパーティで出すドリンクを今考えていて。味見してくれない?」
ブルワリーをはしごして来た私はすでにちょっとほろ酔いだ。そこにウイスキーだなんて……。と恐る恐る口にすると、スモーキーなセージと爽やかなオレンジ、それからウイスキーの芳醇な香りが相まって、なんとも美味しいこと。洒落てるなあ、と感心しつつ、ちゃっかりもう一杯もらっておしゃべりして店を後にした。



広い4車線の道路沿い両側に、コーヒーショップ、レストラン、ブティック、本屋、レコードショップ、などが点在している。さっきのブティックに売られていた帽子がやっぱり気になるなあ、と思っても、戻るのには少し骨が折れるくらいノース・パークは広い。

とりわけUniversity Ave.と30th St.、そしてアーティストが集まるRay St.には興味をそそるショップが密集、と言うほどでもないのだけど、ギュッとしている(アメリカ人が東京に感動する理由がよくわかる気がする)。中でも、お気に入りだったのは<SHOP GOOD>。昨年オープンしたばかりのナチュラルコスメショップ&スパだ。ローカルに根差したブランドが豊富で、サンディエゴはもちろん、LAやサンフランシスコ発のオーガニック製品やウェルネスグッズが揃っている。何よりも、店員さんが可愛い!





購入したお土産を両手に、この日のディナーは30th St.で賑わう<KINDRED>へ。ノース・パークのすぐ隣には、LGBTコミュニティーとして知られるヒルクレストと言うエリアがあったりもするせいなのか、ベジタリアンレストランがとても多い。こちらのレストランもヴィーガンメニューが美味しいと人気で、ローカル客でいっぱいだった。

私が頼んだのはビート・リゾット。真っ赤なビートのリゾットに、ホタテに見立てたポテトのソテーが乗っている。こういうヘルシーフードが上手なのは、アメリカの実に羨ましいところだ。見た目も洒落ているし、味だって普通に美味しい。ヴィーガンフードは不味い、食べ応えがない、なんてイメージは持っていても損じゃない?と思わせてくれる。
カラマリ風の何かのフリッターもすごく美味しかったなぁ。加えて、メスカルなどのメキシカンリキュールやスパイスを多用したオリジナルカクテルも豊富で、初日のディナーは大満足。

隣の席だった韓国人の男の子が私と同じシリーズのカメラを持っていて、まだまだ使い慣れていない私にコツをいろいろと教えてくれた。どうやら、ちょっと新しいカメラを持っているとどこに行ってもすぐに友達ができるみたい。首に下げて街中を歩いているだけでも、通りすがりに声をかけられる。みんなあくまでもカメラに対する純粋な興味があって、いろいろと聞いてきたり「そのカメラかっこいいねー!」と好奇心をむき出しにしてくるのだ。





旅の醍醐味はいろんな人と出会うことだったりするから、私はちょっと、新たな旅のパートナーを見つけた気持ちになった。さて明日は、どこへ行こうかな?


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