Sole, Pizza・・・ e Amore #10
「察してほしい」私と「言わなきゃわからない」彼
Contributed by Aco Hirai
Trip / 2024.09.20
#10
家族付き合いや旅行、日々の食事から家事に至るまで、私の日常の中には「察してほしい」と感じる瞬間がいくつもある。そのたびに返ってくるのは、決まって「言わなきゃ分からない」というアントニオの言葉。
私もこのギャップを理解して、意識的に「察してよ」の先まで言葉で伝える努力はしているつもり。それでも、結局は全て言葉にしなければ伝わらないことが多いのだ。
残念ながら、この「察する」という便利かつ奇妙なコミュニケーション方法は、日本人にしか通用しないらしい。ある日、「察してほしい」という心の内を彼に話してみたけれど「それは難しすぎるよ」、「言えばいいじゃん」という彼らしい率直な答えが返ってきた。。
確かにおっしゃる通り(笑)。でも、言わずに感じ取ってほしいこともある。それは決して怠けたいわけじゃなく、ただ少しだけ寄り添ってほしいだけ。一緒に住んでいるとそういう楽な手段に甘えたくなるときだってあるのだ。
話し合いの末、彼も少しずつ「察する」という感覚を理解しようとしてくれるようになった。彼なりに、私の気持ちを汲み取ろうとする姿勢が見えるようになったのだ。それはそれで少し不自然に感じることもあるのだが(笑)。
もちろん、言葉にして伝えることは大切だ。特に彼のように、言わないと分からない文化で育った人には、それが当たり前なのだから。
それでも、「察してほしい」と感じる自分の気持ちに気づいてくれることを、どうしても少しだけ期待してしまう。これは私の文化であり、私自身の感情だから。
だからこそ、今では、彼がたとえ察せなくても、日本人の「察する」文化を彼なりに考えてくれているのを感じる瞬間が増えてきた。
言葉にすることはもちろん大切。でも、時には「察し合い」も悪くないと思う。
つづく。
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Aco Hirai
2004年オーストラリア移住、2005年帰国、2019年マルタ島留学、2020年イタリア移住。 海外で活躍する日本人を取材したImhereマガジンを不定期で発信しています。(インタビュイー募集中)