Hit the Road #5

北海道ロードトリップーコロナへの逆襲ー

新しい旅に出よう

Contributed by Natsumi Chiba

Trip / nov.16.2020

東南アジアをはじめ世界中を旅してきたNatsumi Chibaさん。コロナ渦の中で、海外へ自由に行くことができない今、彼女が向かったのは北海道。Road tripをしながら雄大な北海道の大地を駆け巡るニューノーマルな旅の模様をお届けします。

#5

行きよりは少し軽くなったバックパックを背負って帰路についた。北海道は、時折冬の入り口手前まで近付いていたけれど、まだ暖かい東京の秋が深まるのはこれからのようだ。毎年楽しみにしている近所に咲く金木犀は、既にほとんど散ってしまっていて、もう匂いもしなかった。そういえば北海道では金木犀を見なかったなと思い、気になって調べてみると、冬が厳しい北海道で寒さに弱い金木犀が越冬するのは難しいのだとか。

なんだかんだで、一ヶ月滞在した北海道。帰って来たら、あったはずの建物が跡形もなく消えていて、いつも通る小さな交差点の信号機が新しくなり、昔からあったレストランが閉店していた。たったの一ヶ月だけど、目に飛び込んでくる街の変化が改めて、自分が旅に出ていたことを実感させた。





自粛が始まった時から、東京や横浜のように人混みがすごい所へ出向くことが激減した上に、自然の中に身を置いたロードトリップの後にしばらく滞在した札幌駅周辺では、久しぶりの雑踏に頭がクラクラした。

北海道の人口も当たり前に都市部に集中していて、田舎へ行けば行くほど人も居ないし家もまばら。なにもない道をただひたすら走り、畑と牛が横目に通り過ぎて行く道はオーストラリアを思い出して、すごく懐かしい気持ちになった。友達はニュージーランドにも似ていると言っていた。

日本で、行ったことのある国を思い出して「また行きたいな」って思ったり、異国の地で日本を恋しく思ったり、旅と暮らしの記憶が交差すればするほど、自分の生まれた国をより愛せるようになって、時が経てば経つほど、訪れた場所をより美しく感じている自分がいる。北海道もまた時間が経ったら、自分の記憶の中で感動しちゃうくらいに、さらに綺麗な思い出になるのだろうな。





なにもかもが目新しい海外の旅とは違って、国内の見慣れている建物や駅の風景、繁華街の様子などを海外に居るのと同じエネルギーで感じ取るのは正直難しい。人も空気も匂いも違うと、五感がくすぐられて、いつもとはまるで違うスイッチが入るから。

でも、北海道の肩肘張らない素朴な風景を見ていると、自分が映画の中にいるような気分になった。例えるなら、スタジオジブリの『耳をすませば』や『おもひでぽろぽろ』に出てくるようななんでもない街や村の風景が、なぜか映画になるとキラキラして見える、あの世界の中に居るような感じ。自分には平凡に感じる街が訪客にとっては新鮮に映るように、普段は見過ごしがちな街の中の「普通さ」や「当たり前さ」にきちんと目を向けると、慣れ親しんだものも新しく見えてくる気がする。よく言う「旅するように暮らす」っていうのは、こういうことなのかもしれない。



世界三大夜景と呼ばれている函館の夜景を見ている時、隣に立っていたご夫婦の旦那さんがひとしきり写真を撮り終えた後、「ちゃんと目で見ましょう。しっかりと目に焼き付けましょう」と奥さんに言う声が聞こえてきて、私も「そうですね」と心で返事をしてカメラを下ろした。旦那さんのその言葉を聞いた時に、旅の良いところは、流れ作業になってしまう日常を一時停止して休憩したり、スロー再生して振り返ったり出来ることだと強く再確認した。

いまだにコロナが収まらないなかでの旅だったけど、現地で旅行者の私達に対して嫌な顔をするような人は一人もいなかったし、GoToトラベルでやって来た団体旅行者、道内の修学旅行生もたくさんいて、みんな思い思いに楽しんでいるようだった。観光地にうじゃうじゃと湧くマスクで半分隠れた笑顔を眺めて、これが「新しい旅」なのだと思った。

完全収束まで先は長いけれど、もし余裕があるなら気晴らしに新しい場所へ新しい旅をしに行くと良いと思う。だって、私たちはあの日本中が暗い空気に包まれていた深刻な時期を乗り越えて頑張ったし、今も変わらず新しい形で頑張っているのだから。たまには自分にご褒美をあげないと。

コロナのせいで「最悪だ!」と何度心に思っただろう? でも、止まった時間を動かすきっかけになった、コロナに導かれたニューノーマルな旅。キャンプに登山に、温泉と美食三昧で最高に楽しい旅が出来たので、これにて私のコロナへの逆襲は終了。また会おう、北海道!


おわり


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