Mimu Note #3

ロードトリップが始まってしまった。

photo&Text: Mutsumi Mimura

Trip / may.16.2018

知らない景色、知らない街を通過していく。
ああ、本当にロードトリップが始まってしまった。

「Route66」と書かれた看板を追いかけながら、ネバダ州に向かって走った。
「Welcome to Nevada」の看板が現れて、州を超えたことにちょっと感動する。



目指すのは、アメリカで一番暑い場所『デスバレー国立公園』。
昔、デスバレーに来て人生がまるっきり変わったという日本人の話を本で読んで以来、ずっと憧れていた場所だった。私の人生も変わるかも! なんてちょっと期待をしたりして……

デスバレーは、この冒険の第一関門。
夏の一番暑い時期に、アメリカで一番暑い場所、しかも「死の谷」だなんて恐ろしい名前の場所に行くなんて。
車がバーンアウトしたり、暑さで干からびてそのままになる人もいたり。なんて話を聞いたものだから、とにかく不安だった。
たくさんの水を車に積んで、できる限り車の点検もした。
デスバレーに近づくにつれてどんどん暑くなっていくような気がして不安が強くなる。
どうか何事も起きませんように。



夕方、デスバレー近くの砂漠の中にポツンとたたずむカジノホテルにチェックインした。
ここまで来ると一瞬でのぼせてしまいそうなほど暑い。
ロサンゼルスから4時間ほどの距離だけど、まだ長距離運転に慣れていない私は、暑さも相まってクタクタだったので、休むことにした。

そして次の日の夜明け前、デスバレーに向かって走り出した。

デスバレー国立公園の入り口を通ってから、車でずいぶん走った。どうやらアメリカで1番広い国立公園らしい。
終わりの見えない砂漠に一本だけのびる道をひたすら走っていると、自分がとてつもなくちっぽけに感じた。



目指していたポイントにやっと到着して車を降りた。
車のドアを閉める音が、ずっと遠くの方まで響く。
風がない。音がない。何かがここで生きている気配がない。
自分の体中の血が流れる音が聞こえそうなほど、無の世界だった。
時々どこかで飛んでいる虫の羽音が聞こえた。

世界にたった一人になってしまったような感覚。変なところだ。

サソリの足跡をみつけて、怯えながらも黙々と砂漠の中を歩いた。
夢中になっているうちに、いつのまにか太陽が顔を出してジリジリ暑くなってくる。

夏は気温50℃を超えるデスバレー。
もっといたかったけど、干からびる前に離れることにした。

ずっと憧れていた場所に自分の足で行けたことに興奮した。だけど、私の人生は特に変わらなそうだ。



そのままラスベガスに向かって走った。
デスバレーからラスベガスまでは2時間。こうなると、2時間の距離が近いように感じてくる。

14歳の時、父に連れられてラスベガスに来た事があった。
父は、アメリカの広大な景色を私に見せて「自分の悩みなんてちっぽけに感じるでしょう」と言ったのを今も覚えている。

アメリカに興味なんてこれっぽっちもなく、いつも眠かった当時の私は、ふーんって感じだった。けれど父の気持ちは嬉しくて仕方がなかったのかと思うと、もったいないことをしたなあと反省した。
そしていつかまた自分の足で、もう一度来たいと思うようになっていた。



あいまいな思い出の答え合わせをするようにラスベガスの街を歩いていたけれど、夜になるとお酒片手にみんな大騒ぎ!
ラスベガスは、女1人の私にはあまりにも恐ろしい場所で、逃げるようにホテルの部屋に戻った。

街のどこかで流れているクラブミュージックが、ホテルの部屋にまで聞こえてくる。
こんなんじゃ寝られないよと思ったのも束の間。暑さと運転と興奮で疲れていたので気が付けば寝ていた。

次の日の朝、そそくさとラスベガスを離れることにした。



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