California Roadtrip#3

Photo & Text: Ako Tsunematsu(MOUTH JOURNAL)

Trip / aug.20.2018

カリフォルニア・ロザンゼルスにある街トーランスから始まって、
サンディエゴ・シティ、パーム・スプリングス、コーチェラ・フェスティバル、ダウンタウン、
そしてアボット・キニーと、人生で初めて自分で買ったカメラ片手にめぐった10日間。


Special thanks to VISIT CALIFORNIA(http://www.visitcalifornia.jp

#3 The Great Palm Springs

「サイドはコールスローか、マッシュポテトか、フルーツか選べますけど何にしますか?」
私は今、サンディエゴからパーム・スプリングスへ向かう道中で入ったダイナーで朝ごはんを頼んでいる。本当はパンケーキを頼みたかったし、隣の人が食べてるワッフルも美味しそうだったけど、これでもか! という具合に乗せられたホイップクリームに圧倒されて、一度つばを飲み込んで我慢した。それでも、運ばれてきたベジタブルオムレツも「卵何個分?」という感じのサイズで、パサパサしてるのにねっとりしているのが憎めないコーンブレッド2つと、お味噌汁一杯分くらいのグレイビーソースが付いてくる。
果てしなく続くフリーウェイに、突如でーん!と現れるような郊外のダイナーレストランは、やっぱりこうでなくちゃ。日本の長距離トラックの運転手が頬張るラーメン+うどんが、よっぽど可愛く思えてくる。



今でこそ、LAやサンディエゴ、サンフランシスコなんて特に、アメリカの都市部にいると食の選択肢は世界で一番多いかもしれないというほど充実している。「グルテンとお砂糖は摂りたくないけど、お魚もお肉も好きだから、ヴィーガンレストランだと今日は物足りなそう!」なんてわがままにも応えてくれる店に、10分も移動すれば出合える気がする。それが私にとってはすごく魅力的。でも、10年くらい前にLAに住んでいた時は、よく家族でこういうアメリカンダイナーに来てはメープルシロップでひたひたになったパンケーキとカリカリベーコンをオレンジジュースで流し込んでいた。懐かしいなぁ、なんて。思い出させてくれたから、ここに寄れてよかった。



そんなノスタルジーに浸るのも、小一時間もやれば飽きてくるもので、雲ひとつない晴天と永遠に続く砂っぽい地形、通り過ぎるギラギラしたアルミのトラックを横目に、まだか、まだかとひたすら走り続ける。2時間ほど経って、やっと林立する風車が現れてきた。まるで、アニメ「エヴァンゲリヲン」の敵キャラクターみたいに迫力満点。さぁ、もうすぐパーム・スプリングスだ。







「お水持ってる? はい、ちゃんとたくさん飲んでくださいね、ハイ、ハイ!」
と、焼けた肌に白い歯が眩しいガイドさんが、手際良くペットボトルの水をみんなに手渡してくれる。パーム・スプリングスに着いてすぐ、アーキテクチャー・ツアーのバスに私は乗り込んだ。これが今日の目的。3時間かけて、街中のミッドセンチュリーモダン建築を見てまわるのだ。
「パーム・スプリングスって言いますけどね、この街にあるパームツリー(ヤシの木)は、ほとんどが街路樹として輸入されて来たものなんですよ」
ちょっと話は逸れるが、1930年代にカリフォルニア全土に植えられたパームツリーが、80年から100年と言われるその樹齢を迎えて一斉に枯れてしまうそう。大量の水を必要とするこの木を、政府はもう植えないらしいから、近い将来カリフォルニアのシンボルが街から姿を消していってしまうと思うと、とても感慨深い。



長年ガイドをやっているという笑顔が素敵なダニエルさんは、体の一部であるかのようにパナマハットがよく似合っている。そしてテンポ良く、この砂漠のオアシスが現在の形となるまでの歴史を説明してくれる。元はインディアンが住んでいたが、療養地として目をつけた白人たちがやって来て、1960年代頃から有能な建築家たちが次々とユニークな建築物をこの地に建てていったとか。

パーム・スプリングスと言えば、LAからも2、3時間で来られる、砂漠の温泉リゾートのイメージが強かった。カジノがあって、豪華なホテルがあって……。その通りなのだけど、こうして大人になって来てみたら、子供の頃はよくわからなかった魅力で溢れている。歴代のスターや富豪たちが建てた城(と呼ぶにふさわしいだろう)を見てまわっていると、彼らがキャデラックを乗り回し、昼夜プールパーティを開催し、贅沢に束の間のバカンスを満喫していたのがものすごくリアルに想像できる。それから、全てがエレガントなのだ。リゾート地にありきたりな下品さが、どこにも見当たらない。









「あれはブリーズ・ソレイユと言って、この街の建物によく見られる特徴のひとつですね」
そう言って、太陽の光の反射を防ぎつつ、美しい模様の影を落とすシェードのような壁や屋根に付いて教えてくれる。屋根が面白い形をしていたり、強烈な太陽光にも負けないスチールやガラスでできていたり。パーム・スプリングスの建物は実に特徴的で、遊び心に溢れていて、上品だ。しかも、どんなに自由に造られていても、どの建物も極端な気候下にあるという共通項を持っているから自然と、いい具合に統一されるのだ。ああ、街全体が可愛い。

エルヴィス・プレスリーやフランク・シナトラの豪邸も見学して、大満足のツアーだった。ありがとうダニエルさん! なんせ、広〜い敷地にプライバシーを加味して巧妙に建てられているもので、到底写真にはこのスゴさは収められない。ぜひ現地で実感して欲しい……。









ブティックやショップが建ち並ぶダウンタウンストリートも少しぶらぶらした。それにしても日差しが強い。湿気こそないが、ひたすら肌がジリジリと焼かれていくのがわかる。「アイスコーヒー……。」とゾンビのように入ったスターバックスがこれまた洒落た造りで、目の前でハンドドリップで淹れてくれるスペシャリティメニューなどがあった。



いつもよりも美味しく感じるアイスコーヒー片手に、向かうはアンディ・ウォーホール・ミュージアム。ミュージアムの入り口に向かうまでの一本道が素晴らしい景観だ。なんでここのビニールマットをピンクにしたんだろう。反対側に咲いているお花と、ミュージアムのPOPと色味がマッチしていてすごく可愛い。







この日、建物と同じくらいたくさん植物の写真を撮った。ぴょこぴょこと生えているサボテンに、実はいろんな種類があるパームツリー。発色の強い小ぶりの花々に、密生して茂るプルメリア。ひたすら真っ青な空と、荒々しくも優しいベージュ色をした山々がキャンバスになって、ユニークな建築物と色鮮やかな植物を際立たせている。ゆったりと、洗練された雰囲気は、このパーム・スプリングスという特別な土地あってのものだ。当たり前だけどしみじみとそう思って、まだまだ暗くなりそうもない明るい空をしばらく見上げて、二杯目のアイスコーヒーを買いに行った。











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